災害弱者支援計画 優先課題として取り組め


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 「災害弱者」を支援する市町村の体制づくりが滞っている。

 県のまとめによると、県内41市町村のうち、災害時に高齢者や障がい者らの避難を手助けする全体計画を策定しているのは昨年3月末現在で19自治体にとどまり、策定率46・3%(全国平均87・5%)は全国最下位の状況だ。
 災害時の避難支援や安否確認に用いる「災害時要援護者名簿」を整備したのは18自治体(43・9%)どまりで、これも全国最下位。要援護者ごとの個別計画策定も6自治体(14・6%)と全国ワースト3位だ。
 政府がガイドラインを示し、市町村に避難支援計画等の策定を求めたのは2005年だ。3年前には未曽有の東日本大震災もあり防災意識は高まったはずなのに、この作業の遅れは看過できない。
 全体計画では、本年度中に新たに18自治体が策定の方針を示していたが、ほとんど進んでいないのが実情という。財政難や人員不足などが理由に挙がっている。離島など小規模自治体が多いことや、台風対策や不発弾処理に追われるなど沖縄特有の事情もある。
 しかし、災害は沖縄でもいつ、どこで起こるか分からない。市町村は難題を乗り越え、計画策定に早急に取り組んでもらいたい。
 東日本大震災では犠牲者の約6割が65歳以上の高齢者で、障がい者の死亡率は被災住民全体の2倍との調査もあるという。事前に要援護者を把握し避難先や支援方法などを確認しておくことは社会全体の責任であり、優先課題だ。
 県内では自治会の組織率や加入率が低いために要援護者の実態把握が難しい状況もある。計画策定の推進には既存組織に頼るだけではなく、小学校単位などで地域防災を考える新たなコミュニティーをつくる必要性もあろう。
 一方で、計画を作れば済むというものでもない。東日本大震災では岩手、宮城、福島3県沿岸部の4割の自治体が、避難支援計画について「実際には役立たなかった」との見方を示した。「津波到達までに時間がなく、避難誘導に用いることができなかった」などがその理由だが、こうした反省も踏まえ、実効性ある計画にするための普段の訓練や点検作業なども大切だ。
 防災コミュニティーの確立に向け行政任せにするのではなく、地域住民ももっと声を上げ、計画策定を加速させる必要がある。