無料低額診療 抜本的な貧困対策構築を


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 この国の貧困問題は危険水域に入っている。公的な支援体制をきちんと構築しないことには、もはや先進国とは言えない。

 生活困窮者医療費減免制度「無料・低額診療(無低診)」の県内利用者が3年余で8千人余に達した。医療が必要なのに診察代を払えない人がこれほどいたということは、この国のセーフティーネット(安全網)が機能していないことを意味する。ことは命に関わる。国は抜本的な貧困対策を早急に構築すべきだ。
 無低診は患者負担の全額か半額などを免除する制度だ。県内では沖縄医療生活協同組合が運営する県内6医療機関が実施している。2010年10月に始まり、13年末までに入院・外来合計で延べ3194件、8160人に適用した。
 生活保護世帯は医療費が無料だから、無低診の利用者は生活保護を受けていない人々だ。所得が生活保護水準以下か、水準の130%までの人が対象となっている。
 利用者は現に、医療を必要としていながら受けていなかった人々だ。すなわち、生活保護を受給すべき水準なのに受給の仕方が分からず受けていなかったか、あるいは生活保護水準を辛うじて上回る所得があるものの、生存を脅かされているということだ。
 命に関わるのだから、憲法25条の保障する「健康で文化的な最低限度の生活」が営めていないのは明らかである。国は憲法違反の状態を放置してはならない。
 制度では、受診料や治療費の本人負担は減免し、その分を実施医療機関が負担している。しかし院外処方される薬代は対象外だ。このため、せっかく受診していながら薬代を心配し、薬局に行くのをためらう人もいる。薬代は平均2800円程度だが、それも払えない人が多い。中には320円の薬代に困る人すらいるのが実態だ。
 関係団体は調剤薬局も無低診の実施主体となれるよう国に法改正を求めている。高知市などは自治体独自で助成している。事態の性質からも、公的機関の助成は緊急性があろう。
 安倍政権は、原則1割に据え置いてきた70~74歳の医療費窓口負担を、4月から2割に引き上げる。生活困窮者が医療を受けられない事態がますます拡大しかねない。
 そもそも診療費なども、本来は国が安全網として保障すべきだ。貧困対策は急務であり、まずは最低限の薬代補助などを急ぎたい。