5年以内運用停止 やはり県民欺く口約束か


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 日本政府のやる気のなさがはっきり表れた気がする。岸田文雄外相が日米外相会談などで米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止について協議しなかったことだ。

 あらためて振り返る。5年以内の運用停止とは、昨年末に仲井真弘多知事が普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立てを承認するに当たり、政府に求めた4項目の基地負担軽減策の一つだ。県民には唐突な要望だったが、振興予算の確保と併せて安倍晋三首相が事実上、知事承認への見返りとして取り組みを約束した項目でもある。
 仲井真知事は「安倍首相は沖縄の要望を全て受け止め、米国と交渉をまとめていくという強い姿勢を示された」と述べ、首相が実現への決意を示したと強調していた。
 ところが岸田外相は今月7日のケリー米国務長官らとの会談で、5年以内の運用停止を提案するどころか、説明もしなかったという。この問題が浮上した昨年末、米側が早々に実現性について否定し、首相の説明は「口約束」だと指摘されていたが、今回の外相会談はまさにそのことを裏付けている。
 仲井真知事は10日の菅義偉官房長官との会談で、5年以内の運用停止に向けた協議会設置を求めた。辺野古埋め立て承認への批判が続く中、運用停止の要望を政府に念押しする狙いがあろう。菅氏は協議会を早期に設置すると明言し「負担軽減などに最大限努力する」と応じた。しかし運用停止を明確に約束はしなかった。
 岸田氏は日米外相会談などで普天間の運用停止についてではなく、辺野古移設計画の方を「決意」を持って進めると伝えた。名護市長選で移設反対派の現職市長が前回選挙よりも得票差を広げて再選された事実を無視する非民主的な姿勢に、重ねて憤りを覚える。
 日本政府は知事の埋め立て承認を挙げて移設進展のアピールに躍起だが、米側には距離を置く姿勢もうかがえる。運用停止に関しては、約10年とされる移設の完了後になるとして日本側の要求に一貫して否定的だ。
 「5年以内」をめぐる政府と県の議論は、かつて沖縄が振り回された使用期限15年問題とも重なる。根拠に乏しい負担軽減策を前提とした知事承認は欺瞞(ぎまん)に満ちている。政府が米側と真剣に協議する気がないのなら、議論をする意味はない。知事は沖縄以外への移設や撤去を求めるのが筋だ。