中台公式会談 民意踏まえ対話重ねる時


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 東アジアの平和と安定に向けた歩みになるよう期待したい。

 中国と台湾の主管官庁トップ同士の公式会談が、1949年の中台分断後初めて実現した。
 冷戦の終結などを背景に、双方が民間の交流窓口を設けて対話をスタートさせてから20年余。中台は互いに相手の主権を認めていないなど、厳しい対立は残っているが、今後は当局間の直接対話が定着し、経済分野を中心に一層の緊密化が進むと見て間違いないだろう。
 台湾海峡の安定は沖縄にとっても望ましいことだ。一方で中台関係の今後の展開が、尖閣諸島や漁業協定などの問題にどのような影響をもたらすのか、関心を持って見守る必要もありそうだ。
 影響力を増す中国経済への依存を深めている台湾側には、関係緊密化でさらなる経済成長を図りたいとの思惑が強く働いている。
 世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)への台湾の正式加入に反対する中国の姿勢を和らげ、国際社会での存在感を高めたい狙いもあるだろう。
 一方、中国側は政治的対話を重ね、中台統一を実現することを目指す。中国の習近平国家主席、台湾の馬英九総統の直接会談の可能性も指摘されている。しかし、中国側が政治的対話の成果を性急に求めることは避けるべきだ。
 台湾では「統一」には慎重な世論が根強い。海洋進出拡大に周辺国の警戒感も強い中で中国が露骨な統一攻勢に出れば、台湾ばかりか国際社会の反発も招き、東アジアの平和と安定にも逆行する。
 馬総統の支持率は10%台で低迷しており、16年には次期総統選も控えている。政治的対話の推進はあくまで、台湾市民の民意を踏まえたものでなければならない。
 馬総統は一昨年の8月、尖閣問題など東シナ海をめぐる争いの平和的解決のための「東シナ海平和イニシアチブ」を提唱した。馬総統は尖閣問題では中国と連携しない姿勢を示したが、中台緊密化を進めても対話姿勢は堅持してほしい。
 尖閣問題や歴史認識問題で保守強硬路線を突き進む安倍政権への不満や警戒が、中台関係の緊密化を促しているようにも映る。
 対話ムードから取り残され、孤立を招くような政治姿勢、政権運営は得策ではない。日本政府も東アジアの平和と安定に貢献する外交戦略を描き、取り組むべきだ。