ケネディ大使来県 大統領に普天間撤去進言を


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 はっきりしていることは、現時点で米政府に米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画を見直す考えがないということだろう。

 ケネディ駐日米大使と稲嶺進名護市長が会談し、市長は辺野古移設計画に関して「絶対に埋め立ててほしくない。新しい基地を造ってほしくない」と強く訴えた。
 大使は聞き役に回り、意見を控えた。先の市長選で辺野古移設阻止を掲げて大勝した稲嶺氏に対し、もし選挙結果を曲げて協力を求めれば民主主義の否定にほかならず批判を免れない。大使が市長への協力要請を自重したのは賢明だろう。
 ただ、この日は仲井真弘多知事との会談でも辺野古移設に触れておらず、先入感なき前向きな発言を期待した県民には、はぐらかされた印象も否めないだろう。県民の関心事である辺野古移設問題で沈黙することは不誠実な態度だ。
 ケネディ大使には自らの頭と心で普天間問題の劇的解決策を探ってほしい。本質は県民の尊厳、命と人権の問題であり、米国の民主主主義の真価が問われる問題だ。これを無視し沖縄をこれ以上軍事植民地扱いすることは許されない。
 米国の複数の安全保障専門家からも辺野古移設や在沖海兵隊の駐留自体に疑問が絶えない。民主国家なら現実を直視し、県民に犠牲、負担を強いるのはやめるべきだ。
 大使は糸満市の平和祈念資料館で「沖縄の人々が払ってきた犠牲と戦争と暴力をなくす上で、沖縄が果たしている指導的役割を物語るこの厳粛な場所を訪れることができて光栄に思う」と述べ、平和推進にできる限り尽くすと誓った。
 平和の礎や首里城などでは、説明役の高良倉吉副知事に沖縄の歴史や文化について質問した。知事との会談では学生の教育文化交流にも協力したい旨言及した。
 沖縄との友好関係に配慮する大使の姿勢には敬意を表する。だが、これと辺野古移設問題は全く別問題であることも強くくぎを刺しておきたい。
 米軍関連事件事故の頻発や在日米軍専用施設の74%の集中など県民は過重負担で常に人権を脅かされている。これは沖縄への構造的差別にほかならず理不尽だ。
 大使は沖縄の民意をしっかり受け止め、普天間の撤去・閉鎖、県外・国外移設こそオバマ大統領に進言すべきだ。米国と沖縄の新しい友好関係を築く上でも日米合意は速やかに見直されるべきである。