憲法解釈変更答弁 9条と立憲主義を壊すな


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 安倍晋三首相が集団的自衛権の行使を認める政府の憲法解釈の変更に関して、「最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と国会で強気の答弁をした。

 憲法解釈に関する政府見解は整合性が求められ、歴代内閣は内閣法制局の議論の積み重ねを尊重してきた。首相答弁は、世界で最も民主的で先進的と言われたワイマール憲法を、ナチス政権が「全権委任法」によって有名無実化した戦前のドイツの悪夢を想起させる。「法の支配」を標榜(ひょうぼう)する民主国家日本において、かりそめにもそのような独裁的手法は許されない。
 政府は従来、集団的自衛権の行使について、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法9条から「許容された必要最小限の範囲を超える」と解釈、一貫して禁じてきた。
 日本が集団的自衛権行使容認に舵を切れば、国防費削減に苦しむ米政府は当然、自衛隊に軍事的役割の強化を求めるだろう。安全保障・危機管理担当の内閣官房副長官補は憲法解釈変更の場合の自衛隊の活動範囲に関し、「地球の裏側であれば日本に全く関係がないかというと、一概に言えない」と述べ、役割の拡大を示唆する。
 一方で日本の軍事大国化が進めば、領土問題や歴史認識をめぐって対立する中国や韓国を刺激し、軍拡競争を招きかねない。
 首相の独断的言動に対し、政権与党内から批判が出ている。村上誠一郎元行革担当相は「首相の発言は選挙で勝てば憲法を拡大解釈できると理解できる。その時々の政権が解釈を変更できることになるのは問題がある」と懸念を示す。
 首相主導で行使容認へ憲法解釈を変更すれば、国民の自由や権利を守るため、憲法によって政府を縛るこの国の立憲主義が形骸化しかねない。この点について、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏は「立憲主義にもとる」と批判する。改憲論者の小林節慶応大教授も「『普通の軍事大国』になることを意味する。それを憲法解釈で実行するのは、単純、明白に違憲だ」と断じる。
 安倍首相は、国会答弁か閣議決定のいずれかの方法で解釈変更を表明する方向とされる。だが「戦争ができる国」への転換を意味する集団的自衛権行使容認を、国民は首相に白紙委任していない。戦争放棄をうたった平和憲法を破壊することは断じて許されない。