名護市長訪米 日米の民主主義問う機会


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 稲嶺進名護市長が4月にも訪米する。日本外国特派員協会と日本記者クラブで初めて会見し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する民意をあらためて米政府関係者や米知識人らに伝え、理解を求める考えを示した。

 名護市長自ら情報発信する意義は大きい。民意を踏まえ辺野古移設の不条理を訴え、「断念」への道筋を開く契機にしてほしい。
 稲嶺市長の訪米は一昨年2月に次ぐものだ。この間、二つの流れが生まれた。
 一つは、自民党県連や仲井真弘多知事が普天間県外移設の公約を事実上撤回し「オール沖縄」の取り組みが揺らいでいることだ。しかし稲嶺市長の再選で、辺野古移設反対の民意が依然強固であることがあらためて示された。
 二つ目は、海外識者らが辺野古移設反対の声明を出すなど、沖縄米軍基地の重圧や辺野古移設の不当性を訴える声が国際的に理解され、支援を広げていることだ。
 名護市は昨年、日米間の情報の受発信を担うシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)にも加入し、情報の収集力と発信力を高めている。今回の訪米でも、反対声明を出した識者やNDなどとも連携し、国内外での支援の輪をさらに拡充してもらいたい。
 残念ながら、在京メディアの普天間問題の情報発信は不十分で、一部内容には疑問も禁じ得ない。
 水俣病患者の側に立って国や企業と対峙(たいじ)し続けた原田正純医師は「圧倒的な強者と弱者とがいた場合、『中立』を装うことは結果として強者の側にくみすることになる。この場合、圧倒的弱者の側に立つことこそ『中立』だ」との趣旨の言葉を残している。
 普天間移設問題にも言えることではないか。国土面積の0・6%の沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中する差別的構造の中で、沖縄発の声が0・6%に抑えられてはあまりにも理不尽で不当だ。
 名護市長は特派員協会などの会見で「移設の強行は民意の否定だ。民主主義国家にとってあってはならない」と述べ、過重な基地負担を強いられる沖縄について「差別的な扱いを受けている。関心を持って、沖縄の実情をそれぞれの国に届けてほしい」と訴えた。全く同感だ。
 日米の民主主義とジャーナリズムが問われている。稲嶺市長が沖縄の民意をバックに、果敢に訪米活動を展開することを期待する。