米豪盗聴活動 国家的犯罪を即中止せよ


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 またもや不正な個人情報の入手、利用が白日の下にさらされた。

 オーストラリアの情報機関が米国家安全保障局(NSA)に対し、米国法律事務所から盗聴した情報の提供を申し出た。ニューヨーク・タイムズが米中央情報局(CIA)元職員スノーデン氏が持ち出した機密文書に基づき報じた。
 米英両国やオーストラリア(豪州)などアングロサクソン系5カ国は「ファイブ・アイズ」と呼ばれる国際通信盗聴網を構築している。盗聴網は5カ国以外の国の政府や要人だけでなく、民間の弁護士もスパイ対象にしていることになる。
 スノーデン氏の告発を契機に昨年来、CIAによる世界規模でのネット上の個人情報収集、NSAによるドイツのメルケル首相ら外国首脳約35人への盗聴など、米情報機関による手段を選ばぬ人権侵害が次々明るみになっている。
 今回、さらに深刻な事態が浮き彫りとなった。2001年の9・11テロ以降、米政府は国内外での盗聴活動を「テロ対策」と主張し、正当化してきた。しかし今回、オーストラリア政府が盗聴したのは、たばこやエビの輸出をめぐり、米豪両国と貿易摩擦を抱えるインドネシア政府に助言していた米法律事務所だ。テロとは無関係だ。経済外交で優位に立つための市民の権利侵害は許されない。
 友好国首脳を盗聴対象にしたことは噴飯ものだ。同時に盗聴対象が人物、分野、目的など事実上底なしであることが判明した今回の一件も法治国家にあるまじき行為で、米豪の事実上の国家犯罪だ。
 昨年11月、国連総会第3委員会(人権)は通信傍受など情報収集活動の悪影響を深く懸念し、インターネットなどデジタル通信上のプライバシー尊重や「独立した監視の仕組み」づくりを各国に求める決議を採択した。国際人権規約が定めるプライバシー権はネット上でも尊重されるとした。
 決議を重く受け止め、不正行為を直ちに中止すべきは、米国など盗聴網を張り巡らせる関係各国であることは言うまでもない。
 米政府はネット上の個人情報収集について、一時「米国市民には適用されない」と説明。米政府内にはいまだに、国家元首クラスの盗聴は控えるが、それ以下なら許容されるとの考えがあると聞く。これは独善以外の何物でもない。直ちに不法な盗聴をやめるべきだ。