国際線ターミナル 機を逸さず集客図ろう


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 低成長時代に成長の芽はそうあるものではない。それをみすみす見逃すのはあまりに大きな損失だ。まして萌芽(ほうが)を知りつつ放置するのは、怠慢のそしりを免れない。

 那覇空港の新国際線ターミナルビルが完成した。旧ビルの貧弱ぶりを思えば大きな前進だが、新ビルでさえあと数年で手狭になる。対応は焦眉の急だ。東アジアの成長の取り込みに機を逸してはならない。すぐ手狭になって弥縫(びほう)策の連続に陥らぬよう、大胆な拡張を図るべきだ。
 新ビルの延床面積2万3450平方メートルは旧ビルの3・7倍だ。従来は連絡バスで搭乗するほかなかったが、旅客搭乗橋4基を新設してターミナルから直接乗り込めるようになった。
 チェックインカウンターも10から20に倍増した。長時間を要した税関・出入国管理・検疫(CIQ)の利便性も大きく向上しよう。
 だが安堵(あんど)できるのは一時である。2013年の海外観光客数は前年比46・2%増と急増した。新ビルは乗降客数100万人を想定した施設だが、乗降客は本年度で既に95万人に上る勢いだ。すぐに手狭になるのは間違いない。
 東アジアの成長力は高く、外国旅行ができる富裕層の増加も著しい。中でも中国は、その富裕層が若いのが特徴だ。つまり小さい子を伴う家族旅行の需要が高いのである。家族旅行で何より重要なのは治安だ。東アジアで子持ちの客が安心して旅行できるリゾートは少ない。その意味で沖縄の潜在的可能性は極めて高いのだ。
 だが施設面の供給力が不足し、せっかく需要があっても伸びを頭打ちにしてしまう「ボトルネック」が近い将来、発生してしまう。何とももったいない話である。
 那覇空港ビルディング社は新ビルと国内線ターミナルビルをつなぐ連結ビルの建設を構想している。規模の検討はこれからのようだが、前述のように潜在的需要は高い。現状ではモノレール駅や駐車場に行くにも雨に濡(ぬ)れてしまう。建設を急ぎ、ぜひ大胆な機能拡張を図ってほしい。
 半面、国際観光地形成に向けた課題はそれだけではない。県の外国人観光客満足度調査によると、不満は「外国語対応能力」や「両替の利便性」に集中する。ハードよりむしろソフトだ。人材育成が急がれる。案内表記も、他の国際観光先進地に学び、外国人でもひと目で分かるように改善したい。