負担軽減会議 時間稼ぎなら意味はない


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 米政府は、はなから運用停止を否定している。それなのに安倍政権と県は、新たに設けた会議で何を話し合うのか。いったいどんな意義があろう。

 仲井真弘多知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立てを承認するに当たり、政府に求めた5年以内の運用停止に関し、政府が関係閣僚と知事らでつくる「負担軽減推進会議」を発足させた。
 安倍晋三首相は「普天間飛行場の危険性除去を中心とした負担軽減は極めて重要な課題だ。政府としてできることは全て行う」と表明した。知事は「5年以内」の実現を重ねて求めたが、政府側から具体的な回答はなかった。
 そもそもできるはずがない。運用停止について米政府は、約10年を要するとされる移設作業の完了後になるとの見解を繰り返し、「5年以内」は日本の国内問題だと突き放している。
 だが日本政府が米側に反論や説得を試みたという話は聞かない。それどころか、今月上旬に訪米した岸田文雄外相は米側との会談で運用停止に言及すらしていない。日本政府も仲井真知事の要求を正面から受け止めるつもりはさらさらないようだ。会議設置に関して政府関係者は「運用停止の議論はあくまでも移設作業の推進が前提」とくぎを刺している。
 ではなぜ会議を設置したのか。埋め立て承認以降、県議会が辞任を求めるなど仲井真知事に対する批判が収まらない中、政府が知事要望からわずか8日で会議を発足したのには、負担軽減の進展を演出することで、移設実現に向けて頼みとする仲井真知事を援護する意図があることは明白だ。11月には知事選が予定されている。来春以降の着工を念頭に、運用停止に関して時間稼ぎを図り、現在の知事の任期中に移設に向けた調査や測量など既成事実づくりを急ぐという政権の魂胆も見え隠れする。
 政府内には、空中給油機の岩国移駐やオスプレイ訓練の県外移転で「運用停止状態」に努力したと訴え、知事の理解を得るシナリオもあるという。
 噴飯ものだ。事実なら政府の約束は詐欺に近い。それともこれが「できることの全て」と言うのだろうか。移設の既成事実化に向けた時間稼ぎが狙いであるなら、会議の設置に意味はない。辺野古移設の断念こそが運用停止の近道であることにいい加減気付くべきだ。