知事証人喚問 無責任県政極まれり


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 視界は一向に晴れない。県議会調査特別委員会(百条委)に仲井真弘多知事が証人喚問されたが、なぜ埋め立てを承認したか、証言に納得のいく人がいるだろうか。

 環境悪化への懸念を払拭(ふっしょく)できないという環境生活部の意見をなぜ無視したのか。合理的な説明はない。知事は「申請が出た以上、最終的な形で終わらせないと」と述べた。行政手続きだから国から申請があれば承認するしかないという意味であろう。県庁は下請け機関なのか。
 知事は、承認直前に東京で入院した際、病院を抜け出して官房長官らに会った事実を認めた。だが埋め立て承認に関する会話はなかったと主張する。県庁内の調整のメモもなく、首相との会談の記録もないという。行政としておよそ考えられない。説明を尽くすつもりがあるのだろうか。
 百条委は知事を再度喚問すべきで、提案のあった菅義偉官房長官の証人喚問も必要であろう。承認過程を徹底解明してもらいたい。
 知事は「法律にのっとって」と繰り返した。公有水面埋立法に照らせば国の申請は承認せざるを得ないという意味だ。だが同法によると「環境保全への十分な配慮」は必須要件だ。外来生物侵入の恐れが強く、ジュゴンやウミガメなど希少生物に影響を与える計画で、環境が専門の部局が懸念を拭えないと言っている以上、法律にのっとればむしろ不承認しかないのではないか。理解に苦しむ。
 県は、申請書が環境について一定の配慮をすると書いたことを承認の理由に挙げる。これから配慮をするだろう、という推測を根拠にしているのだ。「環境保全の措置に先立つ承認」だ。転倒した理屈と言うほかない。推測が理由になるなら、審査する県の責任放棄でしかない。
 県は行政手続き上避けられないかのように強調するが、経緯を知れば知るほど、知事の政治判断だと考えざるを得ない。それなら知事は堂々と政治判断だと説明すべきではないか。
 環境への懸念があっても「言いっ放し」で済ませるのなら、県の環境部局など不要だ。政治判断で何でも決まるのなら、行政組織に意味があるだろうか。無責任県政ここに極まれり、と言うほかない。
 環境への懸念をないがしろにした以上、知事は公有水面埋立法に抵触する疑いがある。百条委継続の理由は十分にあろう。

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