首相「閣議優先」答弁 解釈改憲の強行許されぬ


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 安倍晋三首相が、国会答弁で集団的自衛権の行使容認をめぐる憲法解釈に関し「最終的に閣議決定で変更していく方向になる」と変更に向けた具体的手続きを示した。つまり閣議決定前の国会への解釈変更案の提示を拒否したのだ。

 歴代政権は集団的自衛権について、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法9条から「許容された必要最小限の範囲を超える」として行使を禁じてきた。これに対し、安倍首相は「戦争する国」になるか否かという国の命運にかかわる意思決定を、国会の頭越しに進めると宣言したに等しい。三権分立を揺るがす重大な問題だ。解釈改憲の強行は断じて許されない。
 首相は憲法に関し「不磨の大典ではなく正面から向き合って変えてこそ、戦後体制からの脱却になる」と述べ、将来的な改正に重ねて前向きな考えを示した。
 だが、このような首相の歴史観、憲法観こそ国民論議が必要だ。積極的平和主義の下、集団的自衛権の行使を可能にしたい首相にとって、戦後日本は卑下すべき対象なのか。戦争放棄をうたう平和憲法を守り、戦争をせず自衛隊から戦死者を出さなかったことを過小評価していないか。首相にとって、それは消極的な平和主義なのか。
 元内閣法制局長官の阪田雅裕弁護士は、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に関し「憲法9条の意味はなくなる。法治国家では、法律が時代遅れになれば改正する。なぜ憲法だけ解釈変更していいのか。そんなことが許されるなら立法府は要らない」と批判している。
 首相が設置した安全保障に関する有識者懇談会の座長代理、北岡伸一国際大学長は21日の講演で集団的自衛権の行使容認に関し、朝鮮半島有事を念頭に、周辺事態法の改定を想定していると明言。4月に政府へ提出する報告書の内容に関し、実際の行使は「日本と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合」など五つの条件を設け「抑制的に」運用する方針を示した。
 首相や有識者懇の前のめりな言動は危うい。そもそも憲法改正について国民合意はない。集団的自衛権の行使容認についても国民的議論が全く尽くされていない。政権には歴史認識をめぐり近隣諸国と悪化した外交関係の改善など優先課題があるはずだ。国民を戦争ができる国へ導く集団的自衛権行使容認の憲法解釈の変更は不要だ。