日米環境協定 「汚染者負担」が原則だ


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 在日米軍基地の環境調査に関する新たな協定策定をめぐり、環境汚染の原状回復や環境措置にかかる費用を日本政府が在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)で対応することに、日米両政府が合意していたことが分かった。

 現行の日米地位協定は、基地返還時の原状回復やその補償について米国に責任も義務も課していない。結果として原状回復の責任は日本政府が負っている。環境協定はこれを踏襲し補完するもので、米国への配慮が色濃くにじむ。
 「沖縄返還」をめぐる米軍基地の原状回復費400万ドルなど、米側の財政負担を日本が肩代わりする「密約」が思いやり予算の源流だ。環境協定はその流れで密約を再生産する内容にも見える。
 しかし、汚染環境の原状回復の責任と義務は、本来は米国が負うべきものだ。この協定で、米軍のずさんな環境対策を改善することができるのか、甚だ疑問だ。
 経済活動を中心に、環境汚染に関しては汚染の原因側が対策費用を負担する「汚染者負担」が国際常識だ。在日米軍にもその常識を求めていい時機ではないか。
 2009年発効のイラク米地位協定は、ドイツや韓国の事例を踏襲する形で「環境条項」が設けられ、基地撤去時の環境浄化義務を定めている。これらと比較しても、日米の環境協定は後ろ向きだ。
 特別な“思いやり”が、基地内の環境汚染を助長してきた側面もきちんと見ておくべきだ。
 原状回復の責任も義務も免除されては、管理や対策はどうしてもずさんになる。沖縄市の米軍基地跡地サッカー場のドラム缶から猛毒のダイオキシン類と枯れ葉剤主要成分が検出された問題が、それを如実に物語っている。
 環境協定は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け、海域の埋め立て承認の条件として仲井真弘多知事が要望した基地負担軽減策の一つでもある。
 日本政府は知事の要望に応えることで普天間の辺野古移設を推進しようと環境協定締結を急ぐが、米国への従属的な対応で拙速に協議を進めれば看板倒れになるだけだ。新味も中身もないのなら、新たな協定は政治パフォーマンスにすぎない。
 米軍に自覚と責任を持たせるためにも地位協定自体を改定し、そこに汚染者負担も含めた実効性ある環境条項を設けるべきだ。