武器輸出提言 死の商人に成り下がるのか


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 防衛産業でつくる経団連の防衛生産委員会が、事実上の禁輸政策だった武器輸出三原則を大幅に緩和すべきだとする提言をまとめた。安倍政権が進める三原則見直し作業に呼応した内容で、官民一体を演出し、武器輸出解禁に道を開く狙いがあるとみられる。

 しかしながら、国是である禁輸政策の大幅変更について、国民的コンセンサスは得られていない。戦後、日本が築き上げてきた平和国家の理念をかなぐり捨てる行為に加担し、ビジネス拡大の好機とばかりに安倍政権に擦り寄る産業界の姿は直視するに堪えない。
 提言は、防衛装備品について他国との共同開発に限らず、国産品の輸出を広く認めるとともに、国際競争に勝ち抜くため、政府内に武器輸出を専門に扱う担当部局を設けるよう求めたのが特徴だ。
 背景には、防衛関係予算が頭打ちになる中、産業全体の弱体化に対する危機感があるとされる。経営の哲学も理念もなく、ビジネスや利益だけを追い求めるのであれば、ブラック企業と何がどう違うのだろうか。
 国際社会も、軍需に依存しないで平和国家として経済発展を遂げてきた日本が、人の命を顧みることなく、自らの利益だけをむさぼる「死の商人」に名乗りを上げたと理解するだろう。これを不名誉と思わないのか。
 共同通信社が22、23両日に実施した全国電話世論調査では、武器輸出三原則の緩和に反対するとの回答は66・8%に上り、賛成の25・7%を大きく上回った。
 国民の多くが、武器輸出解禁に否定的な見解を持っていることがあらためて明確になった。集団的自衛権の行使容認論など右傾化を強める安倍政権に対し、国民の懸念が強いことの表れでもあろう。
 三原則については、国是を骨抜きにするような例外措置がなし崩し的に繰り返されている。政府は昨年3月、最新鋭ステルス戦闘機F35の部品製造に日本企業が参入することを容認。同12月には南スーダンで国連平和維持活動(PKO)を展開する韓国軍に国連を通じて自衛隊の銃弾1万発を提供した。他国軍への弾薬提供は戦後初めてだった。
 三原則が形骸化しつつあるのは由々しき問題だ。安倍政権は今こそ国民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、平和国家を象徴する三原則をしっかりと堅持すべきだ。