汚染水漏れ対策 東電任せにせず国主導で


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 東京電力福島第1原発でまた高濃度汚染水が漏えいした。地上タンクを囲むせきの外に漏れた量は約100トン。汚染水にはストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり2億4千万ベクレルと極めて高濃度で含まれていた。

 東電は付近に排水溝がないため「海洋流出はない」と見るが、ストロンチウム90を原発外に放出する際の法定基準は1リットル当たり30ベクレルであり、極めて深刻な事故である。
 当初は「配管の弁の故障」と説明されたが、その後何者かが誤って弁を開けた後にミスを隠蔽(いんぺい)した可能性にも言及。隠蔽が事実なら倫理観の欠如も深刻だ。東電は原因究明と再発防止を徹底すべきだ。
 今回漏えいしたのは「フランジ型」と呼ばれるタンク。鋼材をボルトで締めてつなぐ構造のため、溶接型に比べ接続部の劣化による漏えいの可能性が高い。東電は溶接型への切り替えを進めている。だが、溶接型も塩水による腐食に強いステンレス製ではなく鋼鉄製のため、識者の中には耐久性に疑問を指摘する向きもある。
 政府事故調委員を務めた吉岡斉九州大教授は、汚染水の漏えいをめぐる東電の企業体質について「事前に危険を察知しながら何の対策も講じない」と批判する。後を絶たない汚染水漏えいを見るにつけ、東電経営陣の不作為は許し難い。
 政府も問題だ。昨年、国費470億円を投じて総合的対策の前面に出ると決めたはずなのに、その後も事実上、東電任せだからだ。
 福島第1原発では1~3号機で溶融した燃料の冷却を続けるため、建屋地下にたまった高濃度の汚染水を浄化し循環させている。吉岡氏は原子炉建屋内にあるとされる核物質の発熱量が下がるのを見据えて現行の循環注水冷却システムの空冷方式への移行ができれば、追加的な放射能漏れの抑止が可能と提案する。検討に値しよう。
 政府は省庁横断的な対策チームを組織し、予算と人材を投入して実効ある対策を強化すべきだ。
 東電の破綻処理も不可避だ。与党内からも、早くから汚染水対策への国費投入には「東電に返還させるか、破綻処理させて政府が全責任を負うのか、どちらかしかない。納税者にツケが回るのはおかしい」(河野太郎衆院議員)との批判が出ている。東電の破綻先送りがリスクの放置にほかならないことを政府は悟っていいころだ。