琉大救急部新築 高度医療の体制整備を


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 琉球大学医学部付属病院が病院の隣接地に救急部を移転新築することになった。将来は救命救急センターの県指定を目指すという。意欲的な体制整備を歓迎したい。

 厚生労働省は、地域の救急医療の要として高度救命救急センターの整備を推進している。全国には32のセンターがあるが、沖縄にはまだない。大多数が大学病院に設置されており、沖縄ではやはり琉大病院への期待が大きい。救急部の拡充を機に、高度救急医療体制整備に本格的にかじを切ってほしい。
 琉大病院は従来も救急患者を受け入れていたが、専用病床がなく、入院を要する重症患者は断らざるを得ないこともあった。
 今回の移転新築で救急専用ベッドを6床新設する。救急専属医師と看護師の配置も増やす。意欲的な整備を評価したい。
 沖縄は救急医療の先進地だ。救急車のたらい回しにより救命が間に合わない例が全国的には頻繁にあるが、沖縄ではまず聞かない。過酷な現場で献身的に働く医療従事者に深く敬意を表する。そうした医療体制整備に努めてきた過去の医療行政関係者にも感謝したい。
 その上で、やはり高度救命救急センターの早期整備を求めたい。広範囲のやけどや指肢切断、急性中毒への対応を想定した施設だが、国はそれにとどめず、重症外傷への医療も求めつつある。三次救急医療の担い手とも想定している。
 三次救急は、通常の救命救急センターでは対応が難しい例、例えば複数の診療科にまたがる重篤な患者受け入れに当たる。同時に、救急搬送中の救急救命士に指示を出したり、専門的な救急医療の教育・研修の拠点となったりする。
 こうした高度な機能は、やはり大学病院がふさわしい。そのためには麻酔科手術要員や看護師陣の確保、それに応じた医療機器の常備が必要となる。琉大病院は離島の県立病院に医師を派遣する役割も担っており、その機能の維持も不可欠だ。その両立をあえて希望したい。
 県内では救急出動要請が増加傾向にあり、10年前に比べ1・6倍に上る。だがそのうち52・5%が軽症だ。真に救急医療が必要な人への対応が遅れかねない。不要不急な場合は地域医療機関、中等度の症状は初期救急、重症は高度救命救急という役割分担が重要だ。それら医療機関の総合的な相互連携体制構築も急ぎたい。