エネルギー計画 脱原発の世論に耳傾けよ


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 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原発稼働の推進方針を維持する新たなエネルギー計画案を決定した。原子力発電の位置付けが2010年6月に定められた現行計画と変わらない。福島第1原発事故の後に策定される初めての計画として、果たしてふさわしいと言えるだろうか。

 計画では原発依存度を可能な限り低減させるとしているが、再稼働を進める方針を示し、原発を成長戦略の中に位置付ける安倍政権の政策を反映させた。現時点でも福島原発では汚染水流出などの事故が相次いでいる。福島県内の11市町村では今も避難指示が続き、多くの住民が帰郷を待ちわびながら避難生活を続けている。安倍政権はこうした現実と向き合っているのだろうか。犠牲を強いている人々を切り捨ててでも原子力政策を温存させ、経済成長を優先する姿勢というほかない。事故への反省が感じられない計画は、抜本的に改めるべきだ。
 自民党は2012年の衆院選で「原子力に依存しない社会の確立」を公約に掲げた。「脱原発」を推進すると解釈するのが自然だろう。計画で記された「ベースロード電源」とは、季節に左右されぬ基礎的な電源という意味だというが、原発を重要な基礎的電源に位置付けるなら、「依存しない」とした公約に明らかに違反する。有権者にどう説明するのか。
 自民党内部でも計画を疑問視する動きがある。党内で脱原発を掲げるエネルギー政策議員連盟は計画の抜本的な見直しを求めている。代表世話人の河野太郎副幹事長の「公約とも相当かい離した文章だ。原発事故の反省すら見えない」との批判に党はどう向き合うのか。
 計画の素案は経済産業省が提出したものだ。当初案は原発について「基盤となる」などの文言を入れて必要性を強調していた。こうした前のめりの姿勢の背景には、電気料金の値上がりによる業績への影響を懸念する産業界の意見を追い風に、原発再稼働を早く進めたいという思惑がある。しかし計画に対して集まった1万9千件の一般意見では批判的な意見が目立つという。業界の声に過度に耳を傾ける政府の姿勢は国民の望みに明らかに反しているのではないか。
 原発事故を教訓に脱原発を目指すべきという世論は広がっている。政府はこうした声にこそ耳を傾けるべきだ。