NHK会長言動 経営委は自浄能力を示せ


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 信頼回復どころか、ますます不信感が深まっている。

 NHKの籾井勝人会長が従軍慰安婦は「どこの国にもあった」などとした就任会見での発言について「大変な失言をしたのでしょうか」と述べたことに対し、NHK経営委員会の浜田健一郎委員長が「再度、誤解を招く発言をしたことは、自身の置かれた立場に対する理解が不十分だ」とあらためて注意した。
 籾井会長はいったんは発言を撤回し、信頼回復に努めると約束したはずである。舌の根の乾かぬうちの開き直りとも取れる言動だ。
 浜田委員長は就任会見での籾井会長の発言について「トップの立場を軽んじた」などと注意していた。経営委は会長の任命・罷免権限を持つ最高意思決定機関だ。その委員長による矢継ぎ早の注意は極めて異例だ。注意だけでは済まされない由々しき事態だ。
 籾井会長は就任初日に理事10人に辞表を預けることも求め、全員が日付空欄のまま署名、押印して提出したことも分かっている。
 自らの意に従うなら続投させ、従わないなら罷免する。そう宣言したに等しい行為だ。
 NHK理事会は民間企業の取締役会に当たり、実際の業務を統括する役割だ。籾井会長は辞表預かりについて「一般社会ではよくあること」と述べ、事態を等閑視しているが、公共放送トップの感覚としてはあまりにもお粗末だ。
 籾井会長は従軍慰安婦発言などに関して、個人的見解として撤回はしたが、発言内容自体に問題があったとの認識は示していない。
 人事権をかざして理事をコントロール下に置こうとする会長の下で、公平公正、不偏不党の報道姿勢が担保できるのか。疑念と懸念は深まるばかりだ。
 籾井会長や一部経営委員の一連の発言は、安倍政権のタカ派路線を色濃く反映している。NHKは戦時中の大本営発表に象徴される国策加担の反省の上に立って、実質的な国営放送から公共放送へと生まれ変わったはずである。籾井会長の言動は再び、国策に追従する報道機関への道を歩もうとしているのではとも危惧され、看過できない。
 籾井会長の適格性を問う声は収まる気配がない。受信料支払い拒否の動きも広がっている。経営委は自浄能力を発揮し、国内外にNHK不信を招いた責任を厳しく問い、収拾策を国民に示すべきだ。