武器輸出解禁 紛争助長が国益を損なう


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 戦後の国是だった平和主義をなし崩しにし、国際間の紛争を助長しようとしているとしか思えない。平和主義国家たる日本のイメージを一変させるのは国益を損なう。

 安倍政権が武器輸出三原則を全面的に見直し、輸出禁止から輸出へと基本原則を180度転換しようとしている。紛争国への輸出も可能になる。日本が「死の商人」になってしまうのは明らかだ。
 国策の大転換を、単なる閣議決定で済ませてはならない。国民投票にかけ、全国民の判断を仰ぐべきだ。
 三原則を改めようとする側の理屈はこうだ。武器の開発費は膨れあがる傾向にあるが、各国とも財政難だ。このため多数の国による共同開発が潮流となっている。最新兵器を備えることで抑止力が増す。共同開発による規格の統一などで武器の調達コストも下がる。
 だが、最新兵器開発が抑止力になるのは果たして自明か。これは最新兵器を備えることで、仮想敵国が持つ兵器に対抗しようとする「勢力均衡」の考えに基づく。
 だが、1816~1965年の間に軍拡をした国が戦争に至った例は82%だが、軍拡しなかった国で戦争に至ったのは4%にすぎない。平和学者が紹介する説だが、平和を守りたければ勢力均衡政策を放棄すべきだ、とその研究者は説く。
 与党は「輸出が全く自由になるわけではない。歯止め策を設ける」とも強調する。だが例えば、日本が米欧との共同開発に参画したF35戦闘機はイスラエルにも納入予定だ。イスラエルはガザ地区への空爆で乳幼児も殺害し、国連の医薬品庫まで焼き払った。武器禁輸撤廃により、パレスチナの住民殺害に日本が加担することになる。
 政府に、国内軍需産業を利する思惑があるのは間違いない。日本経団連は兵器の共同開発に日本企業が参入できるよう見直しを求めていた。その通りになったのだ。
 「死の商人になる」との批判を意識してか、新三原則には「経済的利益のためには輸出しない」と付記するという。噴飯ものだ。では赤字のときだけ輸出するというのか。
 軍産複合体はいったん歯車が回り始めると止めるのは至難の業だ。必然的に戦争を招来する。「失業者を生むのか」などと脅し、軍需産業維持を図ろうとするのは各国の例が証明する。軍拡路線の帰結は戦前の日本を見ても明らかだ。その愚を繰り返してはならない。