TPP合意先送り 他の経済協定も選択肢だ


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 シンガポールで25日まで開かれた環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、難航分野の対立が最後まで解けず、「大筋合意」を断念して閉幕した。

 コメや麦、牛・豚肉など重要5項目の関税維持を目指す日本の姿勢が、「例外なき貿易の自由化」を原則とするTPPとは相いれないことが、より鮮明になったと言える。国益である「聖域確保」ができないのであれば、安倍政権は国民との約束通り、交渉から脱退すべきだ。
 そもそも日米のボタンの掛け違いは、昨年2月に発表された安倍晋三首相とオバマ大統領の共同声明に端を発する。首相は「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」として交渉参加を決めたが、米国は5項目を含む関税撤廃を求める強硬姿勢を一貫して変えていない。声明には、「聖域」維持を認めるとの文言がない-というのが、米側の理屈のようだ。先の首脳会談では日米の蜜月ぶりをアピールしたが、同床異夢も極まれりとあきれるほかない。
 今回の閣僚会合は、日米協議の停滞が全体の進展を阻んだとの指摘もあるが、難航分野は関税撤廃問題だけではない。
 米国と新興国は知的財産や国有企業改革をめぐって対立。カナダの乳製品の市場開放問題も難航している。これまでの通商交渉では前例のない「環境」「労働」分野での基準統一化についても、国民生活や産業に大きく影響するため、各国の溝は大きいとされる。
 甘利明TPP担当相は閣僚会合後、「決裂でもなく漂流でもない」と述べたが、昨年末を目標としていた「大筋合意」が、今回も先送りされた事実を直視すべきだ。交渉は暗礁に乗り上げているのが実態だろう。TPP交渉の開始から約4年を経過したが、日米に限らず、参加各国の歩み寄りには限界があると見るのが自然ではないか。
 4月の日米首脳会談を控え、安倍首相の政治決断を求める声も一部にあるが、重要5項目の関税維持を求めた国会決議や自民党の選挙公約が最大限に尊重されるべきであり、筋違いも甚だしい。首相も国会で「決議をしっかりと受け止め、全力で交渉する」と繰り返し答弁してきたことを肝に銘じるべきだ。
 経済関係強化には、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)など多様な手法がある。TPP以外の選択肢も検討すべきだ。