選挙費未報告 全市町村選管で総点検を


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 開いた口がふさがらない。2012年11月投開票の金武町議会議員選挙に立候補した21人のうち9人が、選挙運動費用収支報告書を1年2カ月たったことし2月初旬まで提出していなかった。

 有権者が首長と議会をそれぞれ選ぶ二元代表制で、議会は行政を監視する役割を担う。法律を守らない議員に行政を監視する資格はない。議会の信頼を失墜させた責任は重い。
 町選挙管理委員会は全員に報告書を提出させ議会の信頼回復に努めるべきだ。同時に全ての市町村選管に、閲覧期間が過ぎていたとしても、提出された全報告書を総点検し公表するよう求めたい。
 政治と金が結び付くと金権政治に陥る。公職選挙法は選挙運動の金の流れを透明にするため、選挙の翌日から原則15日以内に選挙管理委員会へ収支報告書を提出するよう定めている。うその記載をした場合は禁錮3年以下か罰金50万円以下の罰則規定がある。
 4回当選しながら一度も報告書を出さなかった議員は、公選法すら読んだことがなかったのか。複数の町議が「罰則を知らなかった」「他の議員も出していないから出さなかった」「先輩議員から出さなくても大丈夫と聞いた」などと未提出の理由を述べた。順法意識を欠いたままなれ合いが常態化していた可能性がある。
 報告書を提出していても、業者への支払いを記載せず立候補段階の届けと異なる出納責任者名を記載した議員がいた。報酬を払っていないのに払ったように装い、領収書を添付していたケースもあった。これでは法律が意図する透明性の確保どころか、金武町の選挙に関する信頼性さえ疑われかねない。
 町選管はなぜ提出された報告書の内容を確認しなかったのか。投開票から1カ月後まで提出を呼び掛けたにもかかわらず、その後なぜ催促をやめてしまったのか。もっと議員を厳しく追及すべきではなかったか。
 収支報告書は投開票日から3年間は誰でも閲覧可能で、選管だけでなく住民が点検できる。有権者は政治と金の結び付きにもっと関心を持ってほしい。閲覧期間が過ぎていても原則公開にして透明性を高める工夫も必要だ。
 ことしは統一地方選、県知事選を控えている。政治家には卓越した見識が求められていることを忘れてはならない。