解釈改憲 憲法、三権分立を壊すのか


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 安倍晋三首相が意欲を示す憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に関し、自民党の石破茂幹事長が「解釈を変えないと関連法案が書けない。目的物なしに国会で何を議論するのか」と述べた。

 与党の公明党が求める閣議決定前の国会審議に否定的な見解を示した発言だ。立法府の役割を自ら否定するような内容で、理解できない。集団的自衛権の行使容認に突き進む首相の姿勢に与野党が反発している中、政権と与党の責任者が「国会軽視」を肯定するようなものだ。
 安倍首相は集団的自衛権行使を認める政府の憲法解釈の変更に関し、国会で「最高責任者は私」と強気の姿勢を示し、閣議決定前に国会に解釈の変更案を示すことを拒む考えを示していた。
 こうした首相の姿勢に対し公明党の漆原良夫国対委員長はメールマガジンで「国民の声を聴くとの一番大切な部分が欠落しており、到底賛成できない」と批判した。
 連立与党の一角である公明党幹部の首相批判は異例だが、正鵠(せいこく)を射ている。漆原氏は「重大な事柄を閣僚だけで決定してしまうのはいかにも乱暴」とも指摘した。
 安倍政権は首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が4月に提出予定の報告書を受け、与党との検討作業を経て憲法解釈変更を閣議決定すると説明している。だが首相が起用した小松一郎内閣法制局長官が解釈変更の検討に着手したことを明らかにし、安保法制懇の北岡伸一座長代理は既に周辺事態法改正などに言及している。水面下で検討作業を着々と進めているのだろう。
 首相は28日、「閣議決定前に国会が政府の見解を問いたいとなれば、答弁する義務がある。必要があれば検討状況は説明する」と述べた。与野党からの批判で、さすがの首相も軌道修正に迫られたようだ。戦争放棄などを定めた憲法9条に基づく解釈を独裁的手法で変えようという手法に身内からも懸念が上がる。首相は批判や異論を直視すべきだ。
 憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認には有権者の過半数が反対している。議論も全く尽くされていない。国会は、戦後の内閣が積み上げた見解を閣議決定による解釈改憲で変えようとする暴走を許してはならない。国権の最高機関として三権分立を脅かす解釈改憲を止めるべきだ。