無償措置法改正案 教育の自主性を損なうな

 八重山教科書問題をめぐり、政府は教科書無償措置法の改正案を閣議決定した。複数の市町村にまたがる教科書の採択について「採択地区協議会の協議の結果に基づき、同一の教科書を採択する」との規定を盛り込んだものだ。

 現行の無償措置法に「採択地区協議会」の文言はない。改正案は条文にそれを入れ、あいまいだった協議主体を採択地区協議会と明確化し協議ルールを整理したことが要点だ。
 改正案が、中学公民教科書で保守色の強い育鵬社版を採択した八重山採択地区協議会を援護し、育鵬社版を拒否している竹富町教育委員会に法的な縛りをかけようという狙いがあるのは明らかだ。
 ただ、地方教育行政法(地教行法)は各教育委に教科書採択の権限があると定めており、法的な矛盾は残ったままだ。
 一方で改正案は、採択地区協議会の組織・運営は今後政令で規定するが、政令の中身次第で協議会の性格が変わる恐れもあり、改正の意図に分かりにくさも漂う。
 政府は教育への国の関与を強める教育委制度改革の地教行法改定案を今国会に提出する構えだ。教科書採択問題はまずは無償措置法改正で対応しようという姑息(こそく)さものぞくが、今後は無償措置法に合わせて教科書採択でも地教行法改正を進める懸念は拭えない。
 しかし、そもそも無償措置法は「義務教育の充実を図る」ことが法の精神であり、そのための円滑な事務手続きを定めたものだ。
 それは「教育の機会均等、教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう、国との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」との理念を掲げる地教行法を具現化することが目的と理解すべきだろう。
 無償措置法の改定で教育行政の理念や独立性・自主性が損なわれることは断じて許されない。
 改正案は教科書採択単位を市町村に柔軟化することも盛り込んだが、文科省はこれまで、八重山地区については「十分に教科書の調査研究が可能かどうかを踏まえれば、一つの地区として設定すべきだ」としており、実効性には疑問符が付く。
 改正案は今国会に提出され、2015年度の教科書採択からの適用を目指すが、あいまいさが残り、教育への政治介入の道を広げる恐れがある。徹底審議を求める。