ウクライナ混乱 軍事介入を回避せよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ロシアのプーチン大統領は、政権が親ロシアから親欧州勢力に移行したウクライナで、自国の権益とロシア系住民を守る権利を留保すると述べた。軍事介入を辞さない構えも鮮明にしている。

 しかし、主権国家への軍事介入は武力行使や威嚇の自粛をうたう国連憲章に反する。ロシアは、将来にわたる憎悪の連鎖を招きかねない軍事介入は厳に慎むべきだ。
 ウクライナ情勢は予断を許さない状況だが、混乱はあくまで平和的な解決策で収拾すべきだ。国際社会は流血事態の回避へ向け、あらゆる外交努力を尽くしてほしい。
 軍事介入の動きに関して、日米欧の先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)は、ロシアがウクライナの主権や領土の一体性を「明確に侵した」と非難している。6月にロシア南部ソチで予定される主要国(G8)首脳会議の準備会合参加を当面見合わせると表明した。
 確かにロシアの軍事行動は正当化できない。だが、だからと言って各国がロシアとの交渉の場を狭めるのは逆効果だろう。危機的状況への肯定的関与を促すべきだ。
 関係各国はウクライナの混乱収拾と未来をめぐる選択は、ウクライナ国民の自己決定権に委ねるべきだという点を肝に銘じてほしい。
 とりわけ、ロシア系住民が多いウクライナ南部クリミア自治共和国では、クリミアが独立した政府を持つことの是非を問う住民投票を3月30日に実施する動きがある。親欧州政権もロシアも、クリミアの動きを力で押さえつけたり後押ししたりするのではなく、住民投票によって示される民意を見守り、尊重するべきだ。
 国連の潘基文事務総長はプーチン氏に対しウクライナ政府との直接対話を呼び掛け、「ウクライナの統合と主権、領土の一体性を脅かしかねない最近の動きを深く懸念している」との声明も発表した。
 関係各国からは、国連や欧州安保協力機構(OSCE)を介した調停や、クリミアへの国際監視団派遣などの提案も出ている。実効ある提案は大いに検討すべきだ。
 ウクライナは内戦に至りかねない状況だが、国内の親ロシア、親欧州両勢力の指導者には粘り強い対話で国内融和の策を追求してほしい。繰り返すが、ロシアを含む国際社会も一番の当事者はあくまで地元住民だと自覚し、軍事力の行使を強く自制してほしい。