中山石垣市長再選 市民の声生かすかじ取りを


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 任期満了に伴う石垣市長選挙で、現職の中山義隆氏=無所属、自民、公明推薦=が、前職の大浜長照氏=無所属=に4千票の大差を付けて、再選を果たした。

 新石垣空港が2013年3月に開港し、石垣市を訪れた観光客は年間で過去最多の94万人に上った。
 観光客の大幅増によって、活況を呈する経済振興面での中山氏の実績が市民に浸透した。預かり保育の全園実施にこぎ着けた子育て支援策などの市政運営も評価され、現職の強みを手堅く発揮した。
 過去に一大争点となってきた、新石垣空港の建設場所が決着した中で迎えた市長選で、市民は生活向上への関心を高めていたようだ。
 中山氏は石垣市にとどまらず、八重山郡の観光新時代を牽引(けんいん)するリーダーとしての自覚を深め、経済の勢いを加速し、市民生活向上に向けた指導力を発揮してほしい。
 石垣市には、課題も横たわる。
 南西諸島への陸上自衛隊の警備部隊配備をめぐり、鹿児島県の奄美群島や宮古島市、石垣市などへの配備候補地の絞り込みが防衛省で進んでいる。
 市長選でも自衛隊配備は争点となった。対立候補の大浜氏は反対姿勢を鮮明にし「住民投票で決める」と主張した。中山氏は誘致することはないと明言しつつ、政府から打診があれば、門前払いせずに、市民の声を聞きながら慎重に判断する姿勢を見せている。
 自衛隊は一度配備されると、恒久的に駐留する公算が大きい。市民の間でも賛否が交錯する重要課題であることは間違いない。
 大型プロジェクトとなることが確実な旧石垣空港の跡利用の在り方も含め、中山氏は、市民の声を丁寧に吸い上げ、誤りのない政策判断を下してほしい。市民融和に努め、透明性の高い市政運営に尽力してもらいたい。
 石垣市長選は、秋の県知事選をにらんだ前哨戦の要素もあった。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を推進する安倍政権と自民党は国政選挙並みに中山氏を支援し、1月の名護市長選に続く連敗を免れ、一定の弾みを付けた格好だ。大浜陣営は革新色を薄めて「市民党」を打ち出したが、米軍基地が争点になりにくい石垣で、基地絡みの主張が前面に出たことで「保守票」取り込みに広がりを欠いた。
 両陣営の勝因、敗因を知事選にどう生かすかが問われそうだ。