米国防戦略見直し 元凶の思いやり予算削減を


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 米国防総省は、安全保障戦略の指針となる「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」を発表した。中国の海洋進出を念頭に、アジア太平洋地域を重視する「リバランス(バランス調整)」の継続を表明する一方、陸軍や海兵隊の削減などを打ち出したのが特徴だ。

 アジア重視と言えば聞こえは良いが、この地域の同盟国への依存を強め、米国の負担を相対的に減らしていく姿勢の表明にほかならない。厳しい財政事情を背景に、国防予算の大幅削減を迫られる米国の苦しい台所事情が反映されている。
 財政難とも関連するが、安倍政権が目指す集団的自衛権の行使容認についても、米側は「無条件に歓迎」(国防総省高官)としていることにも留意が必要だ。国民の合意もないまま憲法解釈を強権的に変更し、米軍と自衛隊の一体化をなし崩し的に進めることは、到底許されないと銘記すべきだ。
 一方、新QDRは、在沖縄部隊を含む海兵隊のグアム移転を進めると明記。その上で「グアム移転の結果、米軍は地理的に分散され、作戦面では弾力的となり、政治的にも持続可能となる」と展望した。
 近海に米軍を寄せ付けないことを目指す中国などの「接近阻止戦略」に対抗する上でも、大陸からのミサイルの射程内にある沖縄に大規模な海兵隊は不要であるとの認識にほかならない。在沖海兵隊の抑止力が神話にすぎないことを私たちは繰り返し説明してきたが、図らずもQDRがその事実を証明したことになる。
 海兵隊の削減計画では、沖縄を含めて世界に三つ配備している海兵遠征軍(MEF)のうち、米東部に司令部を置く第2MEFの廃止を盛り込んだ。
 本来ならば、海兵隊のグアム移転計画がある沖縄の第3MEFが廃止されてしかるべきだ。在日米軍の駐留経費を負担する日本の「思いやり予算」の存在とは無縁ではあるまい。とりわけ普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古に造る移設計画は、日本政府が全額を拠出する究極の思いやり予算だ。
 まさに思いやり予算こそが、沖縄の負担軽減を阻む元凶となっている。財政難は日本も変わりはなく、根拠があいまいな思いやり予算の削減こそ急がれるべきだ。在沖海兵隊の撤退は財政的にも政治的にも日米双方の国益にかなう。辺野古移設を即刻断念すべきだ。