児童虐待通告 多くの目で子ども救いたい


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 全国の警察が2013年の1年間で虐待があったとして児童相談所への通告対象にした18歳未満の子どもは前年比31・8%(5216人)増の2万1603人で、過去最多となり、初めて2万人を超えた。沖縄県警の通告は47人で、12年の87人に比べて約半減している。県内の虐待自体が減少したのか、潜在化して把握が難しくなっているのか、今後の詳しい分析が必要だ。

 虐待の態様別では全国は心理的虐待が最も多く、身体的虐待、養育放棄(ネグレクト)の順となっている。一方、県内は身体的虐待が21人と最も多く、養育放棄13人、心理的虐待11人、性的虐待2人と続いている。うち県警は身体的虐待の4件、性的虐待の2件を刑事事件として摘発している。虐待が「しつけ」などではなく、暴力行為という犯罪と不離一体であることを示すものだ。深刻に受け止める必要がある。
 警察庁が近年、注視しているのが、子どもの目の前で配偶者に暴力を振るう「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」の多さだ。12年に心理的虐待のうち、面前DVの被害者が何人いたかを初めて調べたところ、5431人に上った。13年はさらに増えて、心理的虐待全体の1万2344人のうち8059人に上る。母親が父親に殴られる姿を目の当たりにしたりして、子どもは心に深い傷を負う。決して見過ごしてはならない。
 県内の児童相談所への虐待の相談件数をみると、12年度は363件で前年度より51件減少している。虐待に対する社会的関心が高まっており、一定の歯止めがかかったと見ることもできる。しかし目の届かないところで虐待が起きていないか注視していく必要もあろう。
 厚生労働省は先月末、保育園、小中学校、高校などで所在を確認できない18歳未満の子どもを対象に、初めての実態調査を実施する方針を決めた。所在不明の子どもの虐待事件が報告されているためだ。徹底した調査を進め、被害に遭っている子どもを見つけて救済につなげたい。
 通告は00年施行の児童虐待防止法に基づくものだ。通告義務が課されているのは警察だけではない。国民全員だ。
 虐待を実際に受けていると確認された子どもだけではなく、虐待が疑われる段階でも児童相談所などに通告する必要があり、多くの目で子どもを救いたい。