ヘリ着艦失敗 米軍の隠蔽体質が問題だ


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 度重なる事故の連鎖に、沖縄が強いられている危険性を実感する。米軍普天間飛行場所属のAH1Wヘリが揚陸艦への着艦に失敗した。米軍は、自軍の定義では事故に該当しないと強弁するかもしれないが、機体が破損したのだから常識的感覚では事故と呼ぶほかない。

 嘉手納基地所属F15戦闘機の風防落下に続く2日連続の事故だ。これが民間の航空会社なら、安全策を確立するまで運航停止となるに違いない。米軍も、原因究明と再発防止策構築までAH1Wを飛行停止とすべきだ。
 事故は5日夜、本島の東側洋上でのドック型揚陸艦「デンバー」への夜間着艦訓練中に起きた。ヘリは機体右側の接地脚(スキッド)と、接地脚と胴体を結ぶクロスチ
ューブと呼ばれる部分を破損した。
 事故もさることながら、問題なのは米軍の隠蔽(いんぺい)体質だ。5日夜に発生していながら公表せず、関係機関の問い合わせを受け、6日夕方になってようやく認めた。
 しかも、沖縄防衛局が6日午後に照会した際には、「6日にホワイトビーチで米軍機の事故は発生していない」と回答していた。
 納得できる人がいるだろうか。確かに事故は5日で、「6日には発生していない」のだが、詭弁(きべん)と言うほかない。あまりにも不誠実な態度だ。着艦失敗の事実を県民に知らせたくないという意図が透けて見える。
 米本国ではあり得ない。これが欧州なら、イタリアやドイツは強く抗議するだろう。こんな事態でも日本政府は「適時適切な情報提供」を求める、という程度である。
 内閣官房沖縄危機管理官は「どんな事案であれ、米軍側はできるだけ早く通報してもらいたい」と述べているが、人ごとのような「評論」では済まない。直ちに厳重抗議すべきではなかったか。
 事故通報の迅速化が危機管理官設置の目的の一つだったはずだ。今回の米軍の態度は、このポストが機能していないことの証明と言える。存在意
義が問われる事態と認識すべきだ。
 米軍機の墜落は復帰後も年1回以上起きている。部品落下や着陸失敗などを含めると540件を超える。こんな県がほかにあるか。
 このような事態が放置されるのも、米軍による基地の使い方に日本側が一切口出しできないと定める日米地位協定があるからだ。主権国家なら協定を抜本改定すべきだ。