新石垣空港1年 潜在力を顕在化させよう


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 「開港特需」に沸いた1年は、八重山の潜在力の大きさを示した1年でもあったと言える。

 新石垣空港(愛称・南(ぱい)ぬ島空港)が7日で開港1年を迎えた。
 2013年に八重山地域を訪れた観光客は前年比32・2%増の94万人余と過去最高を記録した。当初、目標に掲げていた80万人を大きく上回った事実が、開港特需の大きさを物語る。
 取りも直さずそれは、八重山の豊かな自然環境や独特の芸能文化などが、内外の多くの人々を魅了する観光資源であることの証明にほかならない。
 旧空港より500メートル長い2千メートル滑走路は、中型機の運航が可能となり、本土直航便も増え、格安航空会社(LCC)も就航した。八重山が本土の各種メディアで取り上げられる機会も増え、全国的な知名度も高まった。
 開港効果は、観光客の増加にとどまらない。かばん製造国内最大手のエース(東京)は開港1年に合わせ、石垣市と包括的な連携事業を締結。今後、国内外の約250店舗で石垣島をPRする。資生堂と石垣市商工会は、石垣島の「夜香木(やこうぼく)」を素材にした香水を共同開発した。こうした地域産業育成の芽を大切に育てたい。
 もちろん、見えてきた課題も少なくない。観光客の急増でホテルは不足がちであり、待合室などが狭い国際線ターミナルの機能強化も急がれる。外国語対応の強化もしかりだ。ホテル客室単価は低迷が続き、「豊作貧乏」の様相も見え隠れする。航空各社の競争激化も先行きの懸念材料だ。極端な体力勝負を強いる価格競争は路線の撤退を招きかねず、結果的に利便性の低下につながりかねない。
 裏を返せば、八重山観光や地域活性化の伸びしろはまだまだ大きいということだ。開港特需に終わらせることなく、目の前の課題を一つずつ着実に克服し、観光客の定着と一層の拡大につなげたい。
 もとより八重山の活性化は、沖縄経済全体の振興に向けても不可欠だ。島ごとに特色が異なる県内離島の観光振興を推進することは、沖縄が持つ多様な魅力を発信することにつながるからだ。
 八重山観光は、宮古諸島と連携した旅行商品の造成や、台湾をはじめ地理的に近い東南アジアからの誘客戦略など可能性は広がる。新たな発想と工夫で、八重山の潜在力を顕在化させたい。