沖縄の防災体制 離島県の備えを万全に


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 離島県・沖縄は陸続きの隣県を持たず、物流などのライフラインを寸断する大規模災害が起きれば、孤立する地域が出かねない。

 県土が狭くて海が近く、海岸から駆け上る津波への脆弱(ぜいじゃく)性も指摘されている。
 東日本大震災から3年たつが、沖縄の特性を踏まえた防災・減災の備えは尽くされているとは言い難い状況が続いている。
 琉球新報社が実施した市町村アンケートによると、大震災を受けてようやく7割の市町村が防災計画を見直し、そのうち8割が津波の到着範囲などの想定を拡大した。
 昨年3月の調査で計画見直しは6市町村だったので前進とは言えるが、手つかずの13市町村は早急に防災計画の充実に臨むべきだ。
 水・食料の備蓄量の目標値に到達しているのは4町村にすぎず、町村部では自主防災組織の整備が進んでいない。住民の命を守る行政の最優先課題が全うされていない状況への危機感が乏しい。
 一方、災害発生時に高齢者や障がいのある人(要援護者)の避難を手助けする計画を策定しているのは24市町村(58・5%)にとどまり、全国平均の87・5%に大きく水をあけられ、最低だった。
 要援護者名簿を作成したのは27市町村(65・8%)で、全国の73・4%と差がある。災害弱者を支える態勢に遅れがあり、自然災害が起きれば、人命に関わる事態が生じかねない。行政による災害弱者の把握率を高めるとともに、地縁、血縁を生かした共に助け合う関係性を強めねばならない。
 一方、災害時に被災地で救急治療を行う医療チーム(DMAT)が所属する県内13病院と県が、全国で唯一協定を交わしていないことも明らかになった。怠慢のそしりを免れまい。
 被災した傷病者を救う医師らが負傷した場合の補償など、身分保障がない中では安心して医療活動に臨めないだろう。
 予算上の制約で、県指定の五つの「災害拠点病院」でヘリコプター離着陸帯が整備されず、職員用の食料や水の備蓄がないことも明るみに出た。防災担当部署と医療福祉部署との連携不足も背景にあろう。
 日常的な医師不足への対処など平時の医療体制整備が優先され、大規模災害への備えが後回しになっていまいか。早急に、県民の命を守る万全の手だてを整えてほしい。