赤土条例違反 国を罰則の対象にせよ


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 県の条例に違反することは何であれ、あってはならない。ましてや国が条例を破るなど論外だ。

 東村高江の米軍ヘリコプター着陸帯建設工事で、沖縄防衛局が県赤土等流出防止条例に違反していたことが判明した。工事で発生した残土約150立方メートルを無届けの場所に運び込んでいた。
 そもそもこの工事自体、住民の強い反対を押し切ってなされている。国が住民を訴える異常事態の下での工事だ。住民の表現抑圧が狙いの「スラップ訴訟」は、米国では26州で禁じられている行為である。不当な上に不当な行為を重ねているこの工事は、直ちに中止すべきだ。
 沖縄防衛局は昨年7月、赤土流出防止策をまとめた「事業行為通知書」を県に提出していた。だが今回、工事を請け負った業者は、その通知書の記載とは別の場所に、残土を運び込んでいた。
 防衛局は「シートで表面を保護しており、これまで流出は発生していない」と述べている。反省しているとは思えない弁明だ。
 納得できないのは条例違反が明白なのに罰則が適用されないことだ。民間事業者が違反した場合は最高50万円の罰則が科せられるが、国や市町村の事業には適用されない。国や市町村が違反することはあり得ないという前提だからだ。
 いわば、歯止め策を、「性善説」に基づく「期待」だけに頼っているような状態だ。このような期待がむなしいことを今回の事態は示している。国も罰則の対象にするよう条例を改めるべきだ。
 今回、住民らが目撃したからこそ違反が判明した。抗議行動がなければ貴重な自然が一層破壊されていたのは明らかだ。国によるスラップ訴訟が、いかに沖縄の利益を損ねているかが分かる。
 残土置き場は米軍基地内だったが、今回、無届けで運んだ場所も基地内だった。住民の訴えで県は事態を覚知し、立ち入り許可を求めているが、2週間程度を要する見込みという。
 環境破壊が分かっているのに直ちに調査もできないのは、日米地位協定が、基地に関する全ての権限を米軍に委ねているからだ。
 主権国家としてあり得ない規定である。欧州の米軍基地ではこんな規定はない。韓国でも立ち入り権を明記している。日本の防衛・外務両省がいかに無力かが分かる。今回の事態に照らしても、不当な日米地位協定は改めるべきなのだ。