集団的自衛権 解釈変更は権力の暴走だ


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 安倍晋三首相が目指す憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認について、自民党の意思決定を担う総務会メンバーらによる総務懇談会で異論や慎重論が相次いだ。

 村上誠一郎元行政改革担当相は「解釈変更は憲政に汚点を残す。憲法改正で堂々と議論するのが筋だ」と反対する考えを明言した。憲法9条の解釈変更という“禁じ手”にまい進する安倍政権に対し、お膝元からブレーキがかかった格好だ。
 共同通信の今年2月の世論調査でも、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認は、「反対」51%、「賛成」38・9%だった。党内の異論や慎重論は国民の反発を警戒していることの表れだ。
 首相は、総裁直属機関を新設して党内論議を続ける方針を示しており、異論や慎重論を押し切る構えも見え隠れする。しかしながら、国民の声を聞かず、党内からの忠言も無視するとなれば、権力の暴走と言われても仕方あるまい。首相は、異論や苦言を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 憲法は国の最高規範である。時の政権の一存だけで憲法解釈を変更することは、憲法が国家権力に制約をかける「立憲主義」を否定することにほかならない。それは法治国家や議会制民主主義の否定にもつながる。歴代政権が解釈変更による集団的自衛権の行使容認を、禁じ手としてきた重みをかみしめるべきだ。
 あらためて確認したいが、集団的自衛権とは、軍事的に密接な関係のある国などに武力攻撃があった場合、自国への攻撃がなくても実力で阻止できる権利を指す。
 仮に米国の戦争に日本が巻き込まれた場合、自衛隊が海外で武力を行使するだけではなく、日本が戦争の現場にもなりかねない。現に防衛省幹部は「米艦艇を防護した代わりに東京が攻撃を受ける事態もあり得る」との認識を示す。
 つまり、平和主義と戦争放棄を掲げる憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めるということで、日本は実質的にあらゆる戦争への参加が可能となろう。戦後、平和国家として歩んできた日本は今まさに岐路に立っている。
 首相は憲法解釈変更ではなく、憲政の王道を行くべきだ。すなわち、政権与党の立場に立ったとしても憲法改正手続きを経た後、国民投票で堂々と賛否を問うのが筋だ。権力の暴走は許されない。