メンタル休職 きめ細かい改善と支援を


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 うつ病などのメンタルヘルス不調で休職した人の42・3%が退職を余儀なくされている。労働政策研究・研修機構の調査で明らかになった。休職できる期間が短く治療が十分でないことや、復職後の支援体制が不十分なことが背景にあることが浮き彫りになった。

 体が病むように心も病む。まずメンタルヘルス不調にならないような職場環境、不調に気づき必要に応じて医療機関につなぐ体制の整備を充実させたい。休職者に対しては復職や再就職を支援する「リワークプログラム」の充実などに力を入れるときだ。
 過重労働やストレスの増加によるうつ病の問題は年々深刻化している。うつ病など気分障がいの患者数は2011年に96万人に上り15年間で2倍以上に増加した。今回の調査で、6割弱の企業でメンタルヘルスに問題を抱えている正社員がいることが分かった。千人以上の企業は7割を超える。
 過去3年間にメンタル不調を理由に休職制度を利用した社員の退職率は全疾病平均の37・8%を4・5ポイント上回った。不調を訴える世代は30代以下が高く、病気を直接の原因とする退職率の中で最も高いという。本人だけでなく、企業経営にとっても大きな損失だ。
 メンタル不調の退職率は休職制度の上限期間が短い中小企業(50人以上100人未満)ほど高い傾向にあり、上限が3カ月までの場合は、59・3%が離職している。うつ病や不安障がいは長時間の休職が必要になることが多い。企業側は休職期間の延長などの見直しが必要だろう。
 今回の調査で仕事量が「増えた」企業の7割がメンタルヘルスに問題を抱えた社員がいた。経営の効率化を進めた結果、人員の余裕が失われ社員の心が病んでしまう。この悪循環を断ち切るために厳しい職場環境の改善が求められる。
 復職後に短時間勤務などの「試し出勤」や、産業医面談などのフォローアップを実施していない企業の退職率が実施企業より高かった。きめ細かい復職対策が求められていることを数字が示している。
 今回の調査結果から、企業には社員をメンタル不調に陥らせず復職者を支える対策が急務といえよう。同時に行政をはじめ社会全体でメンタルヘルスに本腰を入れて向き合うことが大切だ。