配偶者控除見直し 家計圧迫し企業優遇は困る


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 安倍晋三首相が政府の経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で、専業主婦がいる家庭の税負担を軽くする配偶者控除などの見直し検討を指示した。主婦が控除の適用を受けるため働く時間を抑えているとの指摘があり、制度見直しで女性の就労を促すという。しかし控除縮小は事実上の家計増税となる。女性就労促進の方法として妥当か、丁寧な議論が必要だ。

 配偶者控除は、妻のパート収入が103万円以下の場合、夫は課税所得から38万円を差し引くことができる。夫の所得が1千万円以下の場合、配偶者の収入が103万円を超えても141万円未満なら、配偶者特別控除が適用され、夫の控除が段階的に減る仕組みだ。
 このため主婦は収入が配偶者控除の「103万円」を超えないよう、働く時間を調整しているとされ、政府の産業競争力会議も「女性の就労に抑圧的で弊害が大きい」と指摘している。
 しかし女性の就労を阻む要因は控除だけではない。自民党雇用問題調査会は「女性の登用や能力発揮の機会が十分でなく、約6割の女性が出産・育児で退職する状況にある」と指摘している。女性登用、能力発揮の機会拡大を進める政策にも注力すべきだ。
 子育て環境の整備も大切だ。認可保育所に入るための要件を満たしているのに、定員超過などで入所できない待機児童は2013年4月時点で2万2741人いる。ただし保育所に預けられず、やむなく仕事を辞めた人や入所を諦めていた人の子どもは数に含まれておらず、「潜在的な待機児童」は数十万人いると指摘される。これこそ女性の社会進出を妨げている大きな要因だ。待機児童の解消こそ最優先に進める必要がある。
 一方で、諮問会議では民間議員が法人税率の引き下げの重要性を訴えた。こうした議論を踏まえ、経済財政運営の指針「骨太方針」や成長戦略を改定する方針だ。4月には消費税が5%から8%に増税され、ただでさえ家計の負担が増える。その上に配偶者控除が縮小されれば、家計の悪化が強く懸念される。
 法人税減税と並行して実施されれば企業を優遇し、企業の負担を家計に押し付けていると受け止められても仕方ない。国民の不公平感を招きかねない控除見直しは拙速に進めるべきではなく、多角的な議論が必要だ。