限定正社員 働く側の立場で活用を


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 衣料品チェーンの「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング社が、限定正社員化の取り組みを本格化させる。

 国内店舗で働くパートとアルバイト計約3万人のうち、約1万6千人を地域限定の正社員にするという。身分の一定の安定化を図ることで人材を確保し、営業拡大を確かなものにするのが狙いだ。 
 非正規社員の待遇改善は大きな社会問題だ。改善に向けた取り組みは企業の重要な責務であり、大規模な正社員化の動きが雇用環境の改善につながることを期待したい。
 ただ、限定正社員をめぐっては「労働者の要望に合った多様な働き方を促す」との評価の半面、疑問や懸念も示されている。
 限定正社員は転居を伴う異動や残業などがなく、子育てや介護などの事情を抱える人には家庭と仕事を両立させやすいといった利点が指摘されている。
 一方で職種や地域、時間を限定するため正社員より賃金が安く、昇進にも上限があることが多い。職種がなくなったり工場や店舗が閉鎖されたりした場合は解雇されやすいなどの難点も指摘される。
 労働組合からは、企業が経費削減を図るために正社員の限定正社員化を進めるのではないか、「解雇しやすい『正社員』をつくりだそうとしているのではないか」との懸念も示されている。
 限定正社員制度が“悪用”されることがあってはならない。企業は労組などから示されている疑問や懸念を払拭(ふっしょく)し、制度の利点を生かす経営を心掛けるべきだ。
 限定正社員は安倍政権の成長戦略の中で注目されたが、安定雇用の拡大を目指して厚労省は以前から同様の「多様な正社員」制度の導入を推奨しており、既に多くの企業が活用しているという。
 改正労働契約法で2018年4月からは、同じ職場で5年を超えて働く有期契約労働者は本人が希望すれば安定した無期雇用に転換できる。こうしたことも背景に限定正社員化の動きはますます広がりそうだ。
 その利点を尊重して生かせば、一極集中傾向なども是正され、地域経済の活性化にもつながるはずだ。しかし、経営効率化だけのために制度を活用してはさらに労働環境を悪化させ、好循環による景気回復も困難になる。
 経営側はそのことを強く肝に銘じて、雇用改善を図ってほしい。