島ぐるみ会議 命と人権を次代へ継ごう


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 「オール沖縄」運動の再構築を目指す「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」が6月に結成される運びとなった。

 県内41市町村の全首長や議長、県議らが署名し昨年1月に安倍晋三首相に提出した建白書は、米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去、県内移設断念やオスプレイの配備撤回を求めていた。その実現を目指すこの会議の趣旨は、多くの県民の意思に沿うもので高く評価したい。
 建白書の意義は、特定のイデオロギーの主張ではなく、県民の生命と人権、沖縄の尊厳を守る立場から大同団結したということだ。当時の全首長が保革の立場を超えて賛同したことがそれを物語る。
 言い換えれば、日米両政府が事あるごとに喧伝(けんでん)する自由と民主主義、基本的人権の尊重といった普遍的価値を沖縄にも適用せよ-とごく当然の要求をしたものだ。
 1966年の国際人権規約第1条は「すべての人民は自決の権利を有する」とうたう。沖縄県民にも沖縄の未来を自ら決める自己決定権があると理解できる。
 しかし安倍政権は県民の思いが詰まった建白書を、人類の普遍的価値や自己決定権に根差したこの歴史的文書を黙殺してきた。自民党の県関係国会議員や県連、仲井真弘多知事に圧力をかけ、普天間の名護市辺野古移設を容認させた。
 政府の沖縄分断策により沖縄の結束は揺らいでいる。だが建白書の否定は自由と民主主義、人権の尊重という普遍的価値の否定にほかならない。正義は沖縄側にある。これ以上黙殺は許されない。
 島ぐるみ会議に名を連ねる人々は、在日米軍専用施設の約74%が沖縄に集中する現状を「社会的正義にもとる軍事植民地状態」と認識し、県民の生存権が脅かされている状況を「経済的、社会的および文化的発展の自由を否定する構造的差別」だと指摘する。
 稲嶺恵一前知事は、仲井真知事の埋め立て承認を踏まえ「混乱は続くが(移設問題で)県民が一本化して沖縄に押し付けるのはおかしいと国民に訴え、政府を動かすことが重要だ」と強調した。沖縄分断策の本質を冷徹に見抜く、稲嶺氏ならではの説得力ある指摘だ。
 日米が国民の信頼に根差した持続可能な日米関係を望むのなら、建白書を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。県内の全ての政党もオール沖縄の再結集を側面支援すべきだ。