アレルギー対応備蓄 弱者に優しい対策を急げ


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 県内の災害対策で、食物アレルギーに考慮した食料やミルクなどを備蓄している自治体が15市町村にとどまっていることが、琉球新報社の調べで分かった。

 災害発生時には高齢者や障がい者、子どもら弱者がより大きな影響を受けやすい。同様に卵や牛乳、畜肉などに対してアレルギーを有する人たちも食事面で大きなハンディを抱える。
 東日本大震災では、アレルギー対応の食品が入手できなかったり、避難所で配給された食料がほとんど食べられないといったケースが発生し、教訓の一つとなった。
 そうしてみると、県内の状況は大震災の教訓が十分に生かされているとは言い難い。アレルギー疾患は場合によっては呼吸困難など重篤な症状を示し、命に関わる事態も招く。二次災害を防ぐためにも、備蓄計画のない自治体は対応を急ぐべきだ。弱者の救済に自治体間で格差があってはならない。
 15市町村の備蓄内容はカレーやおかゆ、アルファ米など。乳アレルギー対応の粉ミルクを備蓄しているのは7市町村で、食品と粉ミルクの両方を備蓄しているのは沖縄、宮古島、宜野座、与那原、伊平屋の5市町村だけだった。
 もちろん災害対策は国や自治体任せではなく、学校や企業、地域や家庭などの重層的な対応が求められる。政府も個人レベルの備えである「自助」を促す。大規模災害に備え、家庭で最低3日分、できれば1週間分の水や食料の備蓄が必要とする。アレルギー疾患を持つならば、なおさらだろう。
 それでも津波で家庭の備蓄品が流されたり、地震で家屋が倒壊したりすることもある。自治体や公的機関の役割が重要なのは、指摘するまでもないだろう。
 自治体による災害物資の備蓄では、避難所などに直接保管する「現物備蓄」と、災害時にスーパーなどから必要な商品を調達できるよう協定を結ぶ「流通備蓄」がある。財政難から流通備蓄に頼る自治体も多いが、交通網が遮断されて孤立化するなど最悪の事態を想定した対策も不可欠だ。
 アレルギー疾患は見た目では健常者と区別がつかないだけに、「単なるわがままではないか」など偏見も招きやすい。日頃から食物アレルギーの危険性など、周囲に理解を促す取り組みも併せて必要だ。弱者に優しい災害対策の構築を急ぎたい。