橋下氏再選 丁寧な政治に立ち返れ


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 大阪市の出直し市長選で、橋下徹氏が再選された。主要政党が候補者擁立を見送り、予想通りの圧勝だったが、投票率が過去最低の23・59%に落ち込んだ結果を橋下氏は直視せねばなるまい。

 議会の抵抗で足踏みしている大阪都構想の推進を狙って自らが仕掛けた選挙に勝利したとはいえ、得票数は2011年の半分だ。投票総数の実に13・53%が無効票で、白票が4万5千票にも上ったという事実は重い。
 共同通信社の出口調査では、選挙の意義が「あったとは思わない」という回答が35・6%に上る。投票に行った人たちでも橋下氏に批判的な考えが多いことが分かる。
 橋下氏は1月、都構想の制度設計を進める市と大阪府の法定協議会で、具体案の絞り込みが拒否されたことに反発し、任期途中で辞職。「都構想の設計図を今年夏までに作る」と訴え、法定協委員から反対議員を外し、自らが代表を務める大阪維新の会の委員を増やす方針を公約に掲げていた。
 だが委員を交代させ、「設計図」となる協定書を完成させたとしても、少数与党の府議会と市議会の承認を得た上で市民対象の住民投票を実施する必要がある。橋下氏は24日、「設計図を作り、住民投票をする信任は十分得た」との認識を示したが、議会のハードルは高い。委員の交代にこだわれば野党との対立激化は必至であり、都構想はむしろ遠のくだろう。
 橋下氏はこれまで、政敵を激しく攻撃して自己を正当化する手法で支持を広げてきた。選挙戦では「僕を落とすチャンスを与えた」とも主張したが、4分の3が棄権した結果はそうした政治的手法の限界を示している。都構想を強引に進めようとすることに、有権者が待ったをかけたとも言える。
 選挙には約6億円の費用がかかった。橋下氏は「歴代市長より多い37万票を得た。選挙戦で掲げたことを進めさせてもらう」と強気だが、都構想に信任が得られなかったことを素直に認めるべきだ。
 一方、候補者擁立を見送った野党を市民が支持したわけでもない。「勝者なき戦い」を踏まえ、橋下氏と議会は胸襟を開き、今後時間をかけて議論し、合意形成に取り組むべきだ。
 今回の選挙で都構想に関心や理解が深まったとは言えない。府が都になれば何がどう変わるのか。橋下氏と各党は協力すべきは協力し、丁寧な説明を続けてほしい。