日韓関係 真の和解へ歴史の共有を


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 関係改善に向けた第一歩だ。成功をまずは歓迎する。問題は、本格的な雪解けにつながるかどうかだ。真の和解に至る道を真剣に模索したい。

 安倍晋三首相はオバマ米大統領の仲介で朴槿恵韓国大統領と初めて公式に会談した。だが歴史認識には触れず、2国間首脳会談の見通しは依然立っていないのだから、異常事態に変わりはない。
 植民地支配で辛酸をなめた被害者にとり、その歴史は忘れたくても忘れられない痛恨の記憶のはずだ。それを、加害者の側が簡単に「未来志向」などと言うのは反省のなさの表れに見える。ましてその歴史を否定しようとするのは、許しがたい仕打ちであろう。朴氏が歴史問題で譲歩しない立場を取るのは当然だ。
 韓国と真の和解に至るには、歴史認識の共有は避けて通れない。
 慰安婦問題で日本側は、朝鮮半島からの軍や官憲による強制連行の有無だけに焦点を当てがちだが、慰安所から逃げる自由、拒否する自由がなかった以上、強制性は明らかだ。それだけで人道上、決して許されない行為なのだ。
 慰安婦関連の文献資料が乏しい点もしきりに強調される。だが終戦直後、軍や政府が戦犯訴追を恐れ、資料を燃やし廃棄したとの証言は多数ある。最近でも旧日本軍兵士が従軍慰安婦を部隊命令で連行したと証言した資料が国立公文書館で見つかった。軍の関与と強制性を示す資料だ。日本政府がこれまで誠実に、徹底的に調べてきたのか疑問を抱かざるを得ない。
 日韓で研究者・専門家の調査組織を協力してつくり、相互で虚心に調査を尽くし、その成果を共有して歴史認識を丁寧に擦り合わせる作業をすべきだ。
 歴史問題は愛国心を強く刺激する。だがナショナリズムをあおりたてれば不毛な対立が深まるだけだ。差別を惹起(じゃっき)しかねず、紛争にも至りかねない。作業は静穏な環境で進めるべきだ。両国指導者にはそうした賢明かつ慎重な態度が求められる。
 日韓関係がこじれたのは、元従軍慰安婦の請求権問題がきっかけだ。日本側は、二国間の賠償問題は日韓基本条約で「解決済み」という立場で、請求を一蹴してきた。だが国際政治が専門の英国のドリフテ教授は「法的にはその通りだが、政治、外交的には正しい選択だろうか」とかたくなな姿勢に疑問を呈する。傾聴に値しよう。