海底調査入札公告 民主主義に照らし不当だ


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 沖縄防衛局が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて海底地質を調べるボーリング調査の入札を公告した。政府は2015年春にも沿岸部の埋め立て工事に入る腹づもりのようだ。

 昨年12月末に琉球新報などが実施した県民世論調査では、県外・国外移設と無条件閉鎖・撤去が合わせて73・5%を占めた。大多数の県民が反対する県内移設の強行は民主主義に照らして不当だ。
 沖縄防衛局は今回の入札公告とは別に、設計や環境調査などの入札を1月21日に実施している。その2日前には名護市長選挙が実施され、辺野古移設に反対する現職が当選している。名護市民の審判が下った直後の入札公告は、民意を踏みにじる暴挙であり、断じて認められない。
 04~05年に辺野古で実施されたボーリング調査は移設に反対する市民団体の抗議行動で中止に追い込まれた。強い抵抗で調査に踏み切れず、国は当初の事業費とは別に長期化した調査で生じた超過料金約22億円を業者に支払っている。
 会計検査院から不適切な経理処理と指摘され、税金の無駄遣いという結果を招いた。現在まで辺野古の海に「くいの一本」も打たれていない。それだけ住民の反発が強いことを政府は認識すべきだ。
 根強い反対の声に耳を傾けることなく、反対運動封じ込めの必要性を説く県選出国会議員も現れている。自民党参議院議員の島尻安伊子氏は現地での取り締まりについて「(違法行為が)発生したら対処では遅いのではないか」と事前摘発を是認するとも受け取れる発言をした。政府に異議を申し立て、弾圧、処罰の対象となるのなら、もはや暗黒社会ではないか。
 小野寺五典防衛相は28日の会見で抗議活動が予想されることについて「危険防止に万全を期し、適切に進めたい。事業期間が少しでも短縮されるように努める」と話している。危険防止に万全を期すというのならば、反対行動を力でねじ伏せて移設工事を強行するのではなく、沖縄の民意に耳を傾けて事業そのものを中止すべきである。
 県内移設は民主主義への挑戦にほかならない。1月には100人以上の海外識者らが呼び掛け人となって移設反対声明を出し、賛同する署名も1万人を超えた。政府は現行計画を撤回し、県外・国外移設こそ検討するべきだ。