県予算成立 民意と懸け離れている


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 なぜ今回の県予算が削除のないまま成立するのか理解に苦しむ。県議会は最終本会議で総額7239億円の新年度予算案を可決した。

 県議会は仲井真弘多知事に辞職勧告したはずだ。勧告に従わず、居座られた揚げ句、その知事が編成した予算を丸ごと是認するのは論理矛盾ではないか。
 予算の全面的な承認は、知事への全面的承認と受け取られる。知事が行った公約違反の重大性とあまりに不釣り合いだ。民意と懸け離れた県議会の在り方が残念でならない。
 野党内では当初予算案を否決するとの意見もあった。だが「県民生活への影響が大きい」という理由で一部修正の方向になった。
 しかし、当初案を否決しても、暫定予算を組めば、職員の給与や社会保障関係の扶助費などは確保される。県民生活に直結するような影響は当面、ほとんどないはずだ。辞職勧告をした以上、知事の政策判断にかかる予算は削除して可決するのが筋である。
 この2月定例会でも知事は答弁に立った。もちろん予算案についても、である。
 米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた知事の埋め立て承認は、知事がどれほど詭弁(きべん)を弄(ろう)そうと、公約に反する。知事は、沖縄をカジノの候補地とするよう政府に要請した。公約は「県民の合意が得られなければ導入しない」だった。今になって、合意形成前に名乗り出るのは「当たり前だ」と開き直っている。公約違反の連続で、前言を翻してばかりの知事の言葉がどうして信用できよう。それなら予算案の答弁についても信用できないはずではないか。
 野党は、予算案否決論が後退した後、知事の訪米予算やカジノ関連予算を削除しようとした。だが与党とそうぞうの反対により削除はなされず、一括交付金の市町村負担分を県が肩代わりする組み替えの修正だけで可決された。
 知事が訪米すれば、当然米側から埋め立てについて尋ねられ、承認したと答えるはずだ。沖縄の民意と正反対のことを県民代表として表明するのである。誤ったメッセージの発信になるのは間違いない。なぜそんな行為に県民の血税を投じるのか。
 カジノもそうだ。カジノをつくるための行為に血税を投じることを、県民がいったいいつ是認したというのか。県議会の承認は、民意とあまりに懸け離れている。