地域防災対策 共助の精神できめ細かに


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 政府が南海トラフ巨大地震対策の基本方針となる「防災対策推進基本計画」を決めた。津波対策などを進め、最悪で30万人以上と想定される死者数を今後10年で8割減らす目標を掲げた。全壊・焼失建物数は半減させるという。

 対策を強化する「防災対策推進地域」に、沖縄県内の16市町村を含む29都府県707市町村を指定した。深刻な津波被害が懸念される14都県の139市町村については、避難施設整備に対する国の補助が拡充される「津波避難対策特別強化地域」とした。
 防災対策推進地域の自治体は、人的・物的被害の削減目標を必ず達成するとの決意を地域住民と共有し、国、県、NPOなど民間の諸団体との連携を強めてほしい。
 東日本大震災をはじめ数々の災害から教訓を導き出したい。生活や経済活動の利便性を優先するあまり、技術を過信し、自然への畏敬の念をおろそかにするような街づくりをしてはならない。
 基本計画は人的被害を減らすため、津波避難ビルの指定や防潮堤整備、木造住宅密集地の防火対策を重点課題に挙げた。全国の住宅耐震化率(08年は79%)を2015年90%、公立学校の耐震化を15年度までに完了-などの目標も掲げた。行政による救援など「公助」は不可欠だが、非常事態を自ら乗り切る「自助」「共助」も重要だ。それが可能なコミュニティーを再構築し、減災対策を強化すべきだ。
 減災対策は地域の実情にそぐわない画餅であってはならない。実効性の確保に強くこだわりたい。
 例えば避難ルート・施設の一極集中はリスクが高く、当然、複数の手段を確保せねばならない。安全を優先するなら、そもそも人が多く集まる学校や病院、福祉施設などは最初から避難を必要としない高台に配置したり建築構造にしたりする工夫も必要だろう。減災に多くの住民の知恵を集めたい。
 巨大地震対策として「国土強靱(きょうじん)化」を強調するあまり、沿岸を長大堤防で埋め尽くし自然の猛威に対抗するような技術至上主義は禁物だ。繰り返すが、確実な避難ルート・場所の確保や共助などソフトの減災対策こそ拡充すべきだ。
 県内では、自治体の水・食糧備蓄体制や自主防災組織の不備、高齢者・障がい者など要援護者の避難計画策定などが課題として指摘されている。改善が急務だ。