国家戦略特区 制度に魂を吹き込め


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 政府は地域を限って規制緩和する国家戦略特区の第1弾に沖縄県など6地域を指定することを決めた。沖縄は観光や研究開発の国際拠点にする方針だ。

 具体的には、ダイビングや空手など地域資源を活用して観光ビジネスを振興。査証(ビザ)要件を緩和し、外国人観光客が入国しやすくするほか、入管手続きを民間委託で迅速化する。研究開発では、沖縄科学技術大学院大学(OIST)を中心に国際拠点化を推進する方針だ。
 県は規制改革で、カジノを含む統合リゾート(IR)の導入も求めていたが、今回の指定では対象外とされた。カジノに対する県民の合意形成は進んでおらず、政府が認めなかったのは賢明な判断だ。
 こうして見ると、今回の特区指定は、沖縄の観光や研究開発を飛躍的に成長させ、沖縄振興の起爆剤となる可能性を秘める。本来ならば、もろ手を挙げて歓迎すべきところだが、素直に喜べない側面があるのも事実だ。
 当初、有力視されていなかった沖縄が特区に指定された背景には、安倍政権の政治的な思惑があるとされるためだ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をにらみ、沖縄振興に政府一体で取り組む姿勢を示すことで、反対が根強い地元を懐柔しようとする狙いが透けて見える。
 過重な基地負担を強いられる沖縄の振興は、基地受け入れの取引材料ではなく、国の責務だ。安倍政権は、旧態依然とした「アメとムチ」の政策を振りかざせば、県民の反発を招きかねないことを肝に銘じるべきだ。
 もう一つの懸念は、既にある沖縄の経済特区が、思うような成果が上がっていないことだ。沖縄振興の目玉として2002年に創設された金融特区は、法人税軽減の優遇が受けられる認定企業は過去に1社だけで、現在はゼロと有名無実化している。
 政府は戦略特区指定と並行して金融特区の要件緩和など優遇措置を拡大したが、制約が多かったこれまでと、同じ轍(てつ)を踏んではならない。
 政府はこれから戦略特区の詳細な制度設計に入る。今後、地元自治体や企業との会議を設け、具体的な規制緩和策などを策定。早ければ今夏から特区を順次スタートさせる。政府は成長戦略の目玉政策が看板倒れとならぬよう、制度に魂を吹き込んでもらいたい。