渡辺氏8億円問題 説明責任と自浄作用示せ


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 何とも苦しい弁明だ。説明責任が果たされたとは到底言えない。

 みんなの党の渡辺喜美代表が化粧品販売会社ディーエイチシーの吉田嘉明会長から8億円を借り入れていたという問題が発覚した。「政治とカネ」問題の深刻さをあらためて浮き彫りにしている。
 渡辺代表の選挙運動費用や政治資金の収支報告書に該当する記載はない。借入金を政治活動や選挙運動に使っていれば、政治資金規正法や公職選挙法に違反する可能性がある。
 渡辺代表は個人的な借り入れであり、政治資金や選挙資金には流用していないと否定するが、説明不足もあり疑念は拭えない。
 吉田会長は2010年の参院選前の3億円に続き、12年の衆院選前には5億円を渡辺代表の個人口座に振り込んでいる。約5億5千万円が未返済という。
 衆院選前のやりとりでは、渡辺代表が吉田会長に対し選挙情勢を説明した上で「あと5億円必要です。何とぞご融資お願いします」とのメールを送ってきたことも明らかになっている。
 選挙資金に充てたと見るのが自然だ。渡辺代表は「交際費や旅費など政治資金に使うにはふさわしくない支出に使った」と述べるが、説明になっていない。目的や使途を明らかにすべきだ。
 渡辺代表はこれまで他党の「政治とカネ」問題を厳しく追及し、発信力を高めてきた。与野党からは衆院政治倫理審査会(政倫審)での説明を求める声が上がっている。まずはそれに応えるのが、最低限の説明責任の在り方だろう。
 都知事選前に医療法人「徳洲会」グループから5千万円の選挙資金を受け取りながら収支報告書に記入しなかったとして、28日に公選法違反の罪で略式起訴された猪瀬直樹前東京都知事も当初は「個人的借り入れ」と強弁していた。
 「政治とカネ」では、識者からは「個人的借金」が抜け道になっているとして、法制度見直しの必要性も指摘されている。国会としても真剣に法改正を検討すべきだろう。
 みんなの党は存亡が懸かる重大局面にある。党内には「渡辺氏に代わる人材がいない」と“渡辺頼み”の声も強いという。しかし、これで責任政党と言えるのか。
 「個人商店」にとどまるのか、政党として再出発を図るのか。ここで自浄作用を示さなければ、政党としての存在価値はない。