武器禁輸撤廃 軍国主義へ突き進むな


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 政府は武器や武器技術の輸出を基本的に禁じた「武器輸出三原則」を半世紀ぶりに全面的に改めた。閣議決定した新たな輸出ルールの「防衛装備移転三原則」では従来の禁輸政策を撤廃し、輸出拡大に道を開いた。

 安倍晋三政権は集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈の変更も目指している。政府の一存で戦後日本が築き、守り続けてきた平和国家の理念を次々とかなぐり捨てることに強い懸念を抱かざるを得ない。
 新しい「三原則」は武器や技術の輸出に加え、米国が中核の最新装備の共同開発に日本が加わることにも狙いがあるようだ。
 米国防総省で先月開かれた日米装備協力に関する会合の場で新原則は米側から「これからはもっと日米の一体運用ができる」と歓迎された。この見直しが集団的自衛権の行使容認と併せて対米追従であることは疑いようがない。
 新原則には輸出、移転を認めない場合について「紛争当時国や国連決議に違反する場合」と定めている。しかしこれまでの三原則に明記されていた紛争の「恐れのある国」の表現が削除されており、今後はイスラエルなどへの輸出に歯止めがかかるまい。当初、首相は米側への配慮から「紛争当事国」の項目すらも削除しようとしていた。しかし公明党の反発に遭い、この項目は残すことになった。紛争への加担を躊(ちゅう)躇(ちょ)しない安倍政権は危うい。近隣諸国の厳しい目に十分思いを致すべきだ。
 2月には防衛産業でつくる経団連の防衛生産委員会が武器輸出三原則を大幅に緩和すべきとする提言をまとめている。今回の新原則に関する閣議決定はこうした防衛産業の意向も働いている。日本は自国の利益を優先して「死の商人」へと突き進んでいるのではないか。これが安倍首相が主張する「積極的平和主義」の内実だ。実際は「積極的軍事主義」ではないか。
 従来の三原則に基づく禁輸政策は、憲法9条と並んで、第2次世界大戦の反省に立った日本の平和主義の象徴として国民に広く浸透してきたはずだ。2月に共同通信社が実施した全国電話世論調査でも武器輸出三原則の緩和に反対するとの回答は66・8%に上り、賛成の25・7%を大きく上回っている。
 安倍政権は新三原則を撤回すべきだ。断じて軍国主義の道へ突き進んではならない。