理研調査委報告 第三者機関の検証が必要


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 理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーらが発表したSTAP細胞の論文問題で、理研の調査委員会は画像の捏造(ねつぞう)と改ざんの2項目の研究不正があったとする最終報告を公表した。

 しかし、説明不足は否めず、釈然としない内容だ。STAP細胞が存在するかどうかについても見解を示さず、今後理研が1年ほどかけて再現実験をするという。核心部分の真相が解明されないままで「最終」とすることは大いに疑問だ。
 研究不正は小保方氏単独のものと結論づけたが、本当にそうなのか、最終報告だけでは確証は得られない。仮にそうだとしても、単独行動を許し論文の不正をチェックできなかった研究体制の在り方も厳しく問われるべきだ。
 小保方氏は、理研の規定で研究不正の対象外となる「悪意のない間違い」として理研に不服申し立てをする意向だが、社会に対しても説明責任を果たすべきだ。
 研究不正とされた2点のうち、遺伝子データ画像の一部を切り貼りしたとみられる件について、調査委は「改ざん」と認定した。小保方氏は「見やすい写真を示したいという考えから」と釈明しているが、悪意ではなくても意図的であったことは認めた格好だ。
 STAP細胞の万能性を示すために使われた画像が、小保方氏が別の実験で博士論文に使った画像と酷似していた件については、調査委は「データの信頼性を根本から壊すもので、捏造に当たる研究不正」と厳しく断じた。
 小保方氏は「真正な画像データが存在する」と反論している。調査委は「どのような細胞から作ったか確認できない」との見解だ。ここでも双方から、納得のいくような説明はなされていない。
 理研による調査・検証には限界を感じる。第三者的な機関で研究不正や責任の所在などについて、徹底検証すべきだ。
 政府が科学技術政策の目玉として進める「特定国立研究開発法人」(仮称)の指定で、理研は最有力候補に挙がっている。6月の関連法案の成立をにらみ、理研が最終報告を急いだとも指摘されている。
 指定されれば、世界水準の人材を高報酬で雇い長期プロジェクトに取り組める研究環境を整えられる。しかし、最終報告が“トカゲの尻尾切り”になっては世界水準としての信頼は得られない。