米兵飲酒不起訴 地位協定改め逃げ得断て


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 またしても米兵の逃げ得が許されてしまった。昨年11月に豊見城市で発生したひき逃げ事件で、那覇地検は容疑者の在沖海兵隊の2等軍曹を起訴したが、県警が送致していた酒気帯び運転容疑については、不起訴とした。

 被害者は酒に酔った在沖米軍兵士が運転する車にひき逃げされ、腕の骨を折る大けがを負わされたが、飲酒運転に対する刑事罰は下されない。乗り合わせた同僚兵士の同乗罪も立件されない。被害者の心情を思うと、言葉もない。基地の島の不条理はいつまで繰り返されるのか。
 飲酒・ひき逃げは人命を危険にさらす重大犯罪である。殺人などの凶悪犯罪のみならず、基地内に逃げ込んだ米兵の身柄をあらゆる犯罪で日本側に引き渡す制度の確立しか、逃げ得は根絶できまい。日米地位協定の抜本改定の必要性があらためて浮かんだ。
 基地内に逃げ込んだ容疑者を米軍捜査機関が拘束した際、事故の6時間半後の飲酒検知で基準値以上のアルコールが検出された。
 だが、県警は身柄引き渡しを要請せずに独自の検知を見送った。基地内に逃げ込んだことと飲酒の立証を米軍側に負わせた捜査の構図が、最終的な刑事処分のネックとなったようだ。残念でならない。
 容疑者は拘束された後、飲酒運転を否認した。だが、県警は地道な捜査を尽くした。事件後、コンビニで酒を買って基地内で飲んだという供述を、防犯カメラの映像や事件前の飲酒の目撃証言などで崩し、飲酒運転を認めさせた。
 それでも那覇地検は自動車運転過失傷害、酒気帯び運転を除いた道路交通法違反罪での起訴にとどめた。公判で供述を覆した場合の立証の困難さを考慮したようだ。
 身柄引き渡しを求めなかった県警幹部の消極姿勢が尾を引いた。反省を求めたい。同時に、容疑者が飲酒運転を認めていた以上、地検は供述を翻す可能性もにらみつつ、法廷で刑事責任を問うべきはないか。腰が引けた印象は否めない。
 最近も飲酒運転で入った高速道路を逆走し、人身事故を起こした米兵が逮捕されたばかりだ。基地に戻れば、罰せられないという逃げ得意識がはびこっていまいか。
 これでは正義は果たされない。県民の生命軽視と背中合わせの在沖米軍兵士の規範意識の低さを断ち切るためにも、日米地位協定の抜本改定は譲れない。