大間原発提訴 建設凍結を検討すべきだ


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 北海道函館市(工藤寿樹市長)が、電源開発(Jパワー)大間原発の建設中止や原子炉設置許可の取り消しを求め、東京地裁に提訴した。自治体による原発差し止め訴訟は初めてとなる。

 今回の提訴は、市議会の全会一致で可決されており、いわば住民の総意による異議申し立てだ。国とJパワーは重く受け止め、大間原発建設を即刻中止し、無期限に凍結すべきだ。
 函館市と青森県の大間原発は津軽海峡を挟んで最短23キロで、地域防災計画の策定を求められる半径30キロ圏の「緊急防護措置区域」にかかる。ひとたび過酷事故が発生すれば、立地自治体と同様に危険にさらされるが、立地自治体と異なり、原発の建設や稼働をめぐる決定に関与できない現状がある。函館市民をはじめ、近隣自治体の住民が理不尽と憤るのは当然だ。
 しかも大間原発は、世界で初めてプルトニウム・ウランの混合酸化物(MOX)燃料を全炉心で使用できるよう設計され、プルサーマル計画の一環でプルトニウムを消費する。MOX燃料は通常の燃料に比べ制御が難しいとされ、使用後の燃料の処分方法も決まっていないため、専門家の間でも安全性を疑問視する声が根強い。
 さらに工藤市長が指摘するように、周辺に活断層がある可能性のほか、津軽海峡は各国の艦船が行き来するため、攻撃やテロ対策を講じることは不可能に近い。地域住民が不安と不信感を募らせるのは無理からぬことだ。
 函館市はこれまで、国やJパワーに原発の危険性やその対策を明らかにするよう求めてきたが、納得できる回答は得られなかった。
 それでいてJパワーは今年3月、大間原発が新規制基準を満たすかどうかの審査を今秋にも原子力規制委員会に申請すると表明した。今回の提訴は、「周辺自治体」に原発に関与する権利を与えず、住民をないがしろにし続ける原発政策全般への警告と認識すべきだ。
 福島県では、第1原発が立地する双葉町と大熊町を含め、7町村で全住民の避難が依然続いている。原発の再稼働に前のめりな安倍政権と電力会社は、新たな「安全神話」をつくり出そうと躍起だが、この現実を直視する必要がある。
 原発の再稼働に関与できない全国の周辺自治体にとっても、住民の安全と安心を守る観点から、函館市の提訴は人ごとではあるまい。