「運用停止」議論 伝達だけなら意味はない


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 県の要望を取り次ぐだけで、米国が動くというのか。政府の対応には主体性が全く感じられない。

 来日したヘーゲル米国防長官が安倍晋三首相や小野寺五典防衛相らと相次いで会談した。北朝鮮のミサイル対応でイージス艦2隻を日本に追加配備する計画を表明。日米防衛協力指針の年内改定作業を加速することなどでも日本側と一致した。
 だが沖縄の基地負担軽減で日本側は普天間飛行場の5年以内の運用停止などの県要望を伝え、取り組みを説明するにとどめた。具体的議論はなく、運用停止を政府の意思として求めはしなかった。
 5年以内の運用停止は、仲井真弘多知事が昨年末に同飛行場の辺野古移設に向けた埋め立てを承認するに当たり実現を強く求めた項目だが、一連の会談で、日本政府は本気で取り組む考えのないことを自白したようなものだ。
 政府内にはオスプレイ訓練の県外移転や空中給油機の岩国移転などで普天間の「運用停止状態」に近づけ、県の理解を得るアイデアもある。県民を愚弄(ぐろう)する話だ。
 会談に際しても「県も運用停止の中身の議論はしてない」(防衛省)と突き放す声があったが、運用停止を求めた当の知事も、「防衛省と話さないと進めにくい。運用されていないという実感を騒音も含めて感じられる…どこまでゼロにしたものかは今詰めている」(3月の記者会見)と心もとない。
 そもそも運用停止に対し、米政府は約10年とされる移設作業の完成後になるとして協議を一貫して否定している。ヘーゲル氏の「引き続き協力する」との発言も一般論を述べたにすぎない。何より県民は稲嶺県政時代、代替基地の「使用期限15年」という約束がほごにされた経緯を忘れてはいない。
 ヘーゲル氏は移設問題で「近々建設が開始されることを期待する」と述べ、運用停止など全く眼中にないかのような口ぶりだ。辺野古移設が、名護市をはじめ県民の大半が移設に反対する「センシティビティ(敏感な問題)」であると本当に理解しているのなら、ヘーゲル氏は移設自体を断念すべきだ。
 日本政府も運用停止に関する意味のない議論をやめるべきだ。県民の不信は強まっており、負担軽減の印象操作をすればするほど逆効果である。辺野古移設の日米合意を見直すことが「5年以内」を達成する唯一の手段だ。