小保方氏会見 真相の解明には程遠い


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新たな万能細胞発見の意義の大きさと、それを実証する論文の未熟さとの乖離(かいり)がありすぎて、困惑と不信感が一層募る。

 STAP細胞に関する論文について、所属する理化学研究所の調査委員会から研究不正があったと結論付けられた小保方晴子氏が釈明・反論会見を開いたが、真相の解明には程遠い印象だ。
 小保方氏は、理研調査委から改ざんとされた遺伝子データ画像の切り貼りや、捏造(ねつぞう)とされた画像流用については「不注意、不勉強だった」などとして、不備を認め謝罪した。
 しかし、自身の行為は理研の規定で不正の対象外となる「悪意のない間違い」であり、理研の調査は不十分で不正判断に合理的理由はないと主張。第三者機関による再調査の必要性を強調した。 
 一方で、小保方氏は「STAP現象は何度も確認された真実。200回以上作製に成功した」と、存在をあらためて主張した。
 しかし残念ながら、「実験は確実に行われた。データは存在する」と幾ら力説しても、第三者によってSTAP細胞が再現されない限り、説得力は持ち得ない。
 「悪意」があったか否かも焦点とされたが、悪意の存在の有無を問う規定自体が、研究不正に関する国際的な理解を得られないとの指摘もある。注釈もなく画像を加工することなどは、意図に関係なく不正とみなされるのが通常だ。
 一方で、誠実な研究行為の中で生じたミスは許容される場合もあるという。そうなら、STAP細胞の存在が実証されれば、研究の重要性から小保方氏のミスも「誠実」から生じたと判断される可能性はある。しかしまた、誠実さを認めても、それがSTAP細胞の存在を保証するものではないことが、判断をより難しくしている。
 結局、不正の最終判断はSTAP細胞の真相解明を待つしかないのではないか。理研は1年ほどかけてSTAP細胞の検証作業を進めるが、一方で小保方氏の不服申し立てを受けて再調査をした場合でも、50日以内に結論を出すという。
 短期間に、小保方氏への聞き取りも十分とは言えないまま「不正」と結論づけた理研調査に、拙速感があったことは否めない。
 調査や説明責任は尽くされたのか、理研にも疑問は向けられている。小保方氏が示した異議や反論にはきちんと答える必要がある。